トップコラム【上昇気流】(2022年4月17日)

【上昇気流】(2022年4月17日)

菜の花

「春愁や草を歩けば草青く」(青木月斗)。春の草花は情緒にあふれている。凍った大地から芽生える草の青さもそうだが、梅にしても、桜にしても、そして菜の花やタンポポでも、心に明るい微妙なさざ波を起こさせる。

冬という閉ざされたような空気の季節から解放され、これから伸び伸びと生長というドラマが始まるという予感。入学式などのシーズンでもあり、新しい人間関係が築かれたりする。出会いの期待もあるが、半面、何が待っているのか不安でもある。

気流子も、かつて大学に入学するために東京に来た時は、胸中が根拠のない期待と不安でいっぱいだったことを思い出す。俳句の季語には、春にちなんだ「春眠」や「春愁」がある。「春眠」はまさにそのまま。眠気に襲われやすい気候を指す。

のどかな季節感があるが、このような浮き浮きした気分と裏腹に、何となく暗い気持ちになってやる気が出なくなってしまうのもこの時期に多い。「春愁」はこうした気分をうまく表現している言葉だ。

「春愁の昨日死にたく今日生きたく」(加藤三七子)。不思議なほど心が揺れ動くのも新しい出会いを迎える時期だからだろう。草木が春に生育するというのは、冬にため込んでいたエネルギーが爆発して生長を促すことでもある▼そのバランスをうまく取れないと、物憂さなどを感じやすくなる。「五月病」もこの季節に多い。立ち止まってリラックスする時間を持ちたい。

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