京都大学の研究用原子炉KUR(大阪府熊取町)の運転が2026年5月で終了し、廃炉になることが分かった。「えっ、大学にも原子炉があるんですか?」と聞き返されそうだが、日本では商業用原子炉のほか研究・実験炉が1971年までに5大学に設置された。
その後、施設の老朽化が進んで廃炉になったものもあり、現在は京大に2基と近畿大に1基。このうちの京大のKURが廃炉となる。出力は5000㌔㍗と国内最大規模の研究用原子炉である。
この間、原子力発電に関わる人材育成やがん治療などの医療、産業分野の研究と社会実装に多大な貢献をしてきただけに至極残念だ。
わが国は敗戦時まで核物理や放射線研究の先進国だった。大戦中の43年には世界最大のサイクロトロン(円形加速器)を作り上げ、そこで製造された放射性同位元素を化学反応や生体反応のメカニズムの研究に利用してきた。
戦後、数台あったサイクロトロンを連合国軍総司令部(GHQ)にことごとく破壊され、原子核研究ができなくなるという事態に陥った。が、伝統の底力と言おうか、60年代には京大に原子炉実験所の設置が決まるなど、原子力研究は軌道に乗った。
今回のKURの廃炉決定は、米国による使用済み燃料の引き取り期限が2029年に到来する問題を見据えた措置だという。ここでも廃棄物処理問題がネックとなっており、地下埋設による処理技術の早期確立を願うばかりだ。