
国連とは何ぞや。ハマーショルド第2代国連事務総長は「国連が創られたのは人類を地獄に落とさないようにするためであって、天国に連れて行くためではない」と言った。それを「最低限の仕事」とした。
絵空事だった。国連創設後、至る所で「地獄」が見られた。何とかしないのかと問われたアナン第7代事務総長は「国連に何をさせたいのか、国連をどうしたいのか、それは加盟国が決めるべきだ」と逃げた。
ロシアがウクライナに軍事侵攻した今年2月、グテレス第9代事務総長は涙を浮かべて「戦争をやめろ」とプーチン露大統領に訴えたが、虚(むな)しく響くだけだった。
国連の第1の目的は「国際の平和及び安全を維持すること」(国連憲章第1条1項)だが、安全保障理事会の常任理事国(5大国)には拒否権があり、1国でも反対すれば何も決められない。それでいつでも壊せる「ガラスの家」と呼ばれた。
では、真に世界平和を実現するには何が必要なのか。ドイツの哲学者カントは次の3条件を挙げる。第1に各国家が民主主義的であること、第2に国際法が自由な諸国家の連合制度に基礎を置いていること、第3に世界のどこにあっても人々の人格が尊重されること(『永久平和のために』1795年)。
ロシアや中国には無縁の条件である。たとえ道程が遠くとも、自由主義国家が結束して永久平和への道を切り開くしかない。ウクライナの「地獄」を見て一層、そう確信する。