筆者の住むアパートの近隣へ引っ越しを考えている知人女性がいる。現在住んでいる自宅の学区にある学校は荒れていることで有名で、5歳になる子供の将来のため、新たな物件を探している。だが、住宅価格は高騰していて、100万㌦(約1億2千万円)を超える物件がほとんどだったことに驚いたという。急激なインフレが価格を軒並み上昇させているようだ。
不動産情報サイト「レッドフィン」によると、100万㌦以上の住宅の割合は新型コロナウイルスの感染拡大前の2倍に増え、8・2%に上る。
米国では中古住宅が主流だが、住んだ分だけ価値が下がる日本の場合と異なり、むしろ上昇することも少なくない。すでに住宅を所有している人にとっては、住宅価格高騰は恩恵だ。
米国人には新築の方が好ましいという考えはない。何度か住宅の売買をした経験のある60代の知人男性は、新築を注文すれば予定通り完成しない可能性もあり、中古の方がむしろリスクが少ないと語る。
その男性から、1980年代に「新しい」住宅を買ったことがあると聞いた。新築のことかと思ったら、築10年は経(た)っていないものの、他の人が住んでいたことのある物件だった。中古物件を買うことが一般的な米国人にとっては、それも新しい物件ということになるらしい。
住宅価格が高騰しても、すでに自宅を所有していれば、それを販売することで得た資金を元手に、新たな家を購入することができる。その逆に、今、住宅を持っていない中下流層にとっては、住宅所有のハードルが高くなっている。日本と米国、どちらの住宅市場のあり方が良いのか、判断が難しいところだ。(Y)