【上昇気流】(2022年3月12日)

8日、キエフ近郊イルピンで、雪の中、兵士らに助けられ避難するウクライナの高齢者(AFP時事)

「備えなき者は滅びるしかなくなる」―― 。ルネサンス期の政治思想家マキャベリはそう言っている。ロシアのウクライナ軍事侵攻で浮上した「核危機」にも該当しよう。

ウクライナへの軍事支援の声が世界から上がるが、ロシアのプーチン大統領は「手出しをすれば、核戦争になるぞ」と恫喝(どうかつ)した。これには第2次大戦直後の核危機が思い浮かんだ。

旧ソ連は原爆開発で米国に後れを取ったが、1949年に手に入れると、いち早く大型弾道ミサイルを開発し西欧諸国を恐怖のどん底に陥れた。核攻撃から国民をどう守るのか。各国で一大論議が始まった。

チャーチル英首相は「われわれは自身で最新式の核兵器とその運搬手段を保有しなければならない」(55年3月、英下院演説)と水爆保有を宣言。ドゴール仏大統領がこれに続いた。共産圏と国境を接する旧西ドイツは当初、核地雷の配備を考えたが実現せず、米軍の核兵器を国内に配備し、有事に自国軍のものとして運用する「核シェアリング」(核兵器共有政策)を採用。イタリア、ベルギー、オランダもそれに倣った。

中立国スウェーデンは独自の核保有を模索したが、費用と技術面から断念。国民皆兵制と大戦中につくった「民間防衛組織」を恒久化し、核シェルターを全土に設けた。

ひるがえって日本はどうか。核抑止力も核シェルターも考えず、思考停止で備えがない。これでは滅びるしかなくなる。今こそタブーなき核論議を願いたい。

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