「21世紀になってこんな酷(ひど)いことが起きていることが信じられない」――。ロシアの激しい攻撃を避け、地下に避難したウクライナ人妊婦の言葉だ。いまウクライナで起きていることを見ながら、同じような感想を持つ人は多いだろう。
原発を攻撃するなど、ロシア軍はウクライナ侵略を正当化するために何でもやろうとしている。明らかに無法者が主権国家に侵入し暴れ回っているのに、誰も力で取り押さえることができない。ロシアが国連安保理常任理事国であることを考えると、保安官、実はギャングという構図でもある。
自由主義陣営の武器援助や経済制裁は大きな力になるだろう。なのに、ウクライナ側が求める戦闘機の提供に躊躇(ちゅうちょ)しているのは解せない。米国防長官は、交戦国と見なされ、軍事的緊張が高まるからというが、それではロシアのプーチン大統領の思う壺(つぼ)だ。
何をするか分からないことほど怖いものはない。その心理を知るプーチン氏は、脅しのためにそう見せているところもあるのではないか。「NATO(北大西洋条約機構)は弱腰だ」とウクライナのゼレンスキー大統領が言うのも無理はない。
プーチン氏が正常な精神状態なのかを問題にする人がいる。しかし、軍事作戦が当初の目論見通りにいかず、いら立ってはいても、戦争目的に向かってじりじりと前進していることに変わりはない。
「力こそ正義」と信じるプーチン氏の暴挙を止める現実的な方法が問われている。