【上昇気流】(2022年3月10日)

グランドピアノ

新型コロナウイルス蔓延(まんえん)の影響で、さまざまな催しが延期になったり、中止になったりしてきた。音楽演奏の世界は危機的状況にあるが、ピアニスト大井美佳さんのミニトークコンサートを聴く機会があった。

場所は東京都世田谷区のカルラホール。大井さんは東京藝術大学ピアノ科と別科オルガン科を卒業後、ウィーン国立音大で研鑽(けんさん)を重ね、1990年にアントン・ブルックナー国際オルガンコンクールで最高位を受賞した。

ヨーロッパ各地で活躍し、オーストリアの巨匠イェルク・デームス氏に師事して夏期講習ではアシスタントを務めた。日本でも91年以来、東京を中心に定期的にリサイタルを開催。

音楽研究会「ムジカ・アルカディア」を主宰して後進の育成に当たっている。この日は「夕べの祈り~黎明と黄昏~」と題して、トークを交えたコンサートが開かれた。天変地異と戦争で世は終わりのような様相だが、新たな世の始まりでもある。

大井さんは音楽史からメッセージを引き出して、答えのヒントを考えようと企画した。古来、歌は祈りであり、祈りは歌であったから、音の調べに新たな黎明への希望と確信を得ようとする。

バッハ「前奏曲とフーガ ハ長調」から始まってモーツァルト、ショパン、ドビュッシーら7人の音楽家が取り上げられた。バッハの作品は「主音がドで、神の創造の御業を描いている」と述べ、語り掛けるような調べで聴衆を瞑想(めいそう)へ誘った。