【上昇気流】(2022年3月9日)

NHKの大河ドラマも歴史学の成果を反映する。人物評価の変化もその一例だ。一昨年は明智光秀、今年は北条義時。いずれも、悪人か不人気者だ。主君を殺害した光秀、上皇を島流しにした義時。従来の基準では大河ドラマの主人公にふさわしくない人物が、堂々と主役となっている。

今年の大河のタイトルは「鎌倉殿の13人」。「鎌倉殿」とは源頼朝のことだ。が、ドラマの主役は頼朝ではなく義時。鎌倉殿とは征夷大将軍のことだが、義時はその下の執権にすぎない。執権として北条氏が代々世襲だったのに、将軍は世襲とは関係なく、源氏、高級公家、皇族と変わった。鎌倉幕府は不思議な政権だ。

義時は人気も知名度も低いが、頼朝や徳川家康と同等の力量を持つ人物のようだ。弱小豪族の出身のためか、謀略の才にも富んでいたと思われる。

弱いから、謀略ぐらいしか方法がなかったのだろう。大衆から好まれる要素は少ない。そんな人物が大河の主役になった。

そう言えば、家康も「狸親父(たぬきおやじ)」などと言われて長らく嫌われていた。その彼も、1983年の大河の主役となった。原作はベストセラーとなった山岡荘八著『徳川家康』。家康の歴史的評価は今も安定的に続いているが、「家康が好き」という人間は必ずしも多くないのも確かだ。

新しい歴史学の成果を取り入れつつ、否定的に扱われてきた歴史的人物の再評価の流れを結果的につくることも、大河の業績の一つには違いない。

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