ウクライナ侵攻 台湾海峡にどう影響 ―武居智久・元海上幕僚長が分析

中国の想定狂わす
欧州の軍拡 アジアに波及
ロシアのウクライナ侵攻は国際秩序を大きく揺さぶっているが、台湾統一を目指す中国の戦略にも影響を及ぼすことは間違いない。武居智久・元海上幕僚長は、笹川平和財団が2月28日に開いた報道関係者向けのオンラインセミナーで、ウクライナ侵攻が台湾海峡に与える影響について以下の分析を明らかにした。(外報部)

武居智久氏

ウクライナと台湾には類似点がある。一つは、ウクライナと台湾は19世紀的な大国政治を行う強国から圧力を受けていること。二つ目は、民主主義体制が覇権主義的な大国の圧力にさらされていること。三つ目は、どちらも同盟に入っておらず、武力侵攻が起きた時に隣国からの支援が非常に不透明であるということだ。

相違点は、まず地理的環境が全く違う。ウクライナは大陸にあるのに対し、台湾は海洋にある。二つ目として、台湾は曲がりなりにも米国の台湾関係法の下で防衛が保証されている。台湾は半導体王国として世界のデジタル経済に不可欠な存在であり、何かあった場合は世界が台湾を支援する可能性が高い。

さらに、一番大きいのは、台湾軍は70年以上にわたり、中国による着上陸侵攻を食い止める能力を整備してきた。ウクライナのように圧倒的な兵力差が地上戦であるという状況は生まれない。従って、台湾海峡で今すぐ何かあるということはないだろう。

ウクライナ侵攻で中国にとって予想外だったことを挙げたい。まず第一に、北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)のメンバーでもないウクライナに対し、欧州が中立国のフィンランドやスウェーデンを含め、一丸となって支援に乗りだしたことだ。デンマークは義勇軍への参加も認めている。

二つ目は、欧州はエネルギーをロシアに依存している。にもかかわらず、ロシアとの経済関係を中止し、自国経済に跳ね返ってくることを顧みずにウクライナ支援に向かっている。民主主義諸国は経済を犠牲にしてでも他国の横暴に立ち上がる姿勢を示したことは、中国にとって予想外だったと思う。

三つ目は、欧州が団結をさらに強め、軍事力の増強に乗りだしたことは、必ずアジア太平洋地域に跳ね返ってくる。日本をはじめ各国が防衛力の増強に乗りだすことにつながる。これも中国にとって予想外の出来事だったと思う。