上昇気流(2022年2月21日)

小泉純一郎、菅直人両氏ら5人の元首相が、東京電力福島第1原発事故で「多くの子供たちが甲状腺がんに苦しんでいる」とする書簡を欧州連合(EU)欧州委員会に送った。その内容は風評の類いであり不快だ。

東京電力福島第1原発の構内に立ち並ぶ処理水を保管するタンク=2月19日、福島県大熊町(時事)
東京電力福島第1原発の構内に立ち並ぶ処理水を保管するタンク=2021年2月19日、福島県大熊町(時事)

福島県が実施している検査で見つかった甲状腺がんについては、福島県の「県民健康調査」検討委員会やUNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)などの専門家会議により、現時点では放射線の影響とは考えにくいという評価がされている。

小泉氏らはこれらの事実をよく承知しているはずだが……。偏見や差別を生み出しかねない書簡の送付は同氏らが唱える“原発ゼロ”運動の一環だ。

放射線は今日の社会で、医学では診断や治療、工業では半導体の微細加工や新素材開発、農業では食品照射による滅菌や害虫駆除などにも利用される。応用例を挙げれば切りがない。

また原子力の学術研究は、宇宙創成などに関する真理の解明に欠かせない。5年前、茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構を訪ね、筑波山を望む広大な敷地の地下に埋設された周長3㌔の素粒子加速器を視察した。驚くべき緻密な装置だ。

原発ゼロ、すなわち原子力による電力供給を見切るということは、その応用分野の技術にも計り知れない負の影響を与えてしまう。一度は国の原子力政策を担った人たちなのに、国の将来をずたずたにしてしまうような風聞をなぜ流布しようとするのか。

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