上昇気流(2022年2月4日)

<袖ひちてむすびし水の凍(こほ)れるを春たつ今日の風やとくらむ>。

きょうは立春。『古今和歌集』巻第一「春歌上」の2番目に置かれた紀貫之の有名な歌が口を突いて出てくる。

立春は二十四節気の最初の節気で、春の始まりを意味する。しかし、日本では「春とはいえ……」などという表現がよく用いられるようにまだ寒く、実際の季節感とのずれがある。これは、二十四節気が中国の中原(黄河中下流域地方)の季節を基準に作られたことによる。

太陽の熱で暖まりやすく冷めやすい大陸に対し、海に囲まれた日本はその変化が概(おおむ)ね遅れてくる。大陸性気候と海洋性気候の違いである。

初の勅撰和歌集である古今集は国風文化誕生の象徴とされるが、貫之のこの歌は中国の『礼記』の「孟春(春のはじめ)の月、東風凍(こほり)を解く」を踏まえたものだ。確かに今頃、暖かい東風が吹き出すことがあるか疑問で、幾分フィクションを含んだ歌のように思われる。

北京国家体育場前に設置された五輪マーク=1月31日(UPI)

季節感のズレを解消するため、日本独自の二十四節気を作ればいいのではないかとも思うが、そういう意見もあまり聞かない。どうも日本人は、そのズレを面白みとして受け入れているフシがある。実際、古今集にはそのズレを詠った歌が多い。

二十四節気が生まれた中国・北京で冬季五輪がきょう開幕する。少数民族の文化の尊重をうたうこの国の建前と現実のズレは悲劇的だ。ウイグルやチベット、南モンゴルの人々の春はその兆しも見えない。

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