地方の人口減少が進む中で放課後、生徒がスポーツや文化に親しむ部活動の存続を危ぶむ声が高まっている。そうした中で北海道教育委員会(以下、道教委)はアンケート調査やフォーラムを実施することで地域部活動の現状や課題、対応を検討。これまで学校が教育の一環として捉えてきた部活動が今大きな岐路に立たされている。(札幌支局・湯朝 肇)
4年間で道内の部活動が12%減、チーム作れない学校も
公立の中学・高校で放課後や休日に、生徒が教員の指導を受けながらスポーツあるいは文化的な活動を行う部活動は日本特有の制度だといわれている。もちろん、米国や英国などにも学校で授業以外に野球やバスケット、アメリカンフットボール、ラグビーなどを教えるケースはあるものの、誰でも入部できるものではない。技術的に優秀な生徒に限り活動が許されることが多い。
平成29年度のスポーツ庁の調査報告によれば、28年度のわが国の運動部への部活動参加率は中学男子で75・1%と7割を超え、中学女子でも54・9%と半数以上が参加。これに文科系部活動を加えると中学校全体の部活動への参加率は優に7割を超え、部活動が生徒にとって大きなウエートを占めていることが分かる。
ところが、近年の地方における人口減少の進行で、この部活動が大きな岐路に立たされている。例えば、道教委の報告では平成29年度に道内中学・高校において合計して3555部あった部活動が、令和2年では3125部に減少した。わずか4年間で430部が消滅し12・1%減少したという。競技によってはチームを作ることのできない学校もあるという状況だ。
北海道教委、アンケート調査やフォーラムで現状分析
こうした中で道教委は、地域部活動存続のための対応策を検討すべくアンケート調査やフォーラムを開催し、現状分析や意見収集に努めている。ちなみに昨年11月20日、札幌市内で開かれた地域部活動推進フォーラムでは、具体的に地域で部活動に取り組む実践例の報告を受けるとともにアルペンスキー指導者でリレハンメル五輪出場経験のある川端絵美さんを招き今後の対応策への意見を求めるなど活発な意見交流の場が持たれた。
新型コロナ下、オンラインで行われたフォーラムには全道から教育関係者150人余りが参加。その中で登別市、紋別市、当別町が現在、国の研究指定を受け行っている実践例を報告した。このうち登別市は市教育委員会の主導の下、PTA連合会やスポーツ協会など10団体が参加して令和2年に「地域スポーツの在り方検討委員会」を設置、中学校などの部活動についても課題に挙げ取り組みが始まっている。現在、同市では複数校の中学校で合同部活動を行い、市内在住のスポーツ専門指導員が平日および休日にわたって指導するなど新たな取り組みを紹介した。
友情育む場が減少も教師に負担、在り方見直しも
一方、北海道教育庁教職員課の今村隆之課長は、「中学・高校の部活動は生徒にとっても仲間をつくり友情を育む場として、あるいは目標に向かって練習するなど心身の鍛錬の場として大きな意義を持っている」としながらも「部活動の指導は校長からの職務命令ではなく、あくまでも教師の自発的な行為として捉えられている面がある。その一方でほとんど教師は部活動では部長や顧問など何らかの形で関わっており教師にとっては少なからず負担になっていることも事実」と語る。働き方改革が叫ばれる中、勤務超過が指摘される教師にあって部活動に占める割合は極めて高く、その在り方を見直さざるを得ない状況にきている。
学校と協働し段階的に地域へ移行する方向性へ
文部科学省は今後の部活動の在り方について、学校と地域が協働し地域の人材と希望する教員の参画を得ながら令和5年度から段階的に部活動を地域に移行していく方向性を打ち出している。ただ、地方においては指導する人材の確保や教員の兼職兼業の許可、費用負担など課題もある。
フォーラムに参加した川端さんは「部活動には授業では得られないものがある。どこを学校に任せ、子供たちに何を与えて豊かにしていくか教育関係者はその役割を考える必要がある」と述べる。
長い歴史を持ち、世界でも類例を見ない日本の部活動。人口減少で大きな岐路に立たされている地域部活動だが、川端さんが言うように何よりも子供への教育を主眼に置いた部活動の在り方を考える必要がある。