「阿吽の呼吸」 脳科学からアプローチ

OISTがサッカーJ2のFC琉球と共同研究へ

 沖縄科学技術大学院大学(OIST、ピーター・グルース理事長)とサッカーJ2のFC琉球を運営する琉球フットボールクラブ株式会社(倉林啓士郎・代表取締役会長)はこのほど、脳科学の知見を生かし、将来的にプロアスリートのパフォーマンス向上にも貢献できるプロジェクトの立ち上げを目指した覚書を締結した。スポーツに脳科学を掛け合わせることで選手のパフォーマンスがどの程度向上するのか、成果が注目される。(沖縄支局・豊田 剛)


プロ選手のパフォーマンス向上へプロジェクト立ち上げ

「阿吽の呼吸」 脳科学からアプローチ
研究連携で覚書を交わしたFC琉球の小川淳史社長(右から2人目)とギル・グラノットマイヤーOIST副学長(同3人目)=昨年12月10日、恩納村の沖縄科学技術大学院大学(同大学提供)

 11人が一つのチームとしてフィールドでプレーするサッカーは選手間の動きの連携が大事になる。口に出さずとも、選手がどこにボールを出し、どこで受けるか、「阿吽(あうん)の呼吸」が結果を大きく左右する。この点に着目したのがOISTだ。科学の力でサッカーの質が向上するのかどうか、面白いプロジェクトがスタートした。
 プロジェクトを手掛けるのは、トム・フロース准教授が率いる身体性認知科学ユニット。FC琉球チームメンバーの呼吸や動きのタイミングの「一致性」、そして、それがチームワークにどう影響してくるのかといった「同期性」に着目し、選手同士の身体の動きに同期性があるかどうかの解明を目指す。
 将来的には選手を研究室に招き、サッカーを模したタスク(作業)を行いながら脳波測定を行い、脳活動の「同期性」も研究する。選手の同期性を測ることで、より連係したセットプレーの手法、選手同士のコミュニケーション能力の向上の方法が分かるのではないかと期待されている。Jリーグのクラブで脳科学からアプローチするのは今回が初めてだという。

練習メニューの効率化に期待、成功すれば他競技に応用も

 FC琉球の小川淳史社長とOISTのギル・グラノットマイヤー副学長は12月10日、沖縄県恩納村のOISTで会見し、研究の連携で覚書を交わした。締結期間は2021年12月10日から1年間で、必要に応じて更新できるというもの。
 来シーズンから本格的にデータを蓄積し、必要に応じて選手を研究室に招いて脳活動の記録や心拍数などモバイル機器を使ったデータ収集を行い、同期性について見える形で数値化することを目指す。その結果に基づき、FC琉球と共に効果的なトレーニング法の考案やチームワークへの波及効果を分析し、プレーに応用していくというものだ。
 FC琉球の小川社長は「世界的にも類を見ない研究に、この沖縄でチャレンジできることに感謝する」と述べた。その上で、「現代サッカーにおいて『認知』や『直感』といった脳科学の要素は非常に重要で、まだまだ可能性が大いに残っていると言われている。OISTとFC琉球の連携により、この分野の研究が進むことにワクワクしている」とコメントした。
 また、小川社長が具体的に期待する効果として「セットプレーの質の向上」で、「コーナーキックの時にどう動くか」「より効果的なセットプレーを生み出せるかもしれない」と述べ、「連係や阿吽の呼吸とは何なのか、が解明されれば、より効果的な連係を生み出せる。適切な練習メニューを組めるかもしれない」と期待を示した。
 フロース准教授は「サッカーなど複数の人が連携して活動する時に波長が合うことが研究で分かっている」と述べ、研究効果に自信を示した。ギル・グラノットマイヤー副学長は、「FC琉球とのユニークな研究プロジェクトをきっかけにさまざまな研究テーマが生まれ、連携をより促進できることを期待しています」と述べた。このプロジェクトが成功すれば、アメリカンフットボール、ラグビー、バレーボールなど他の団体競技にも応用される可能性が高まる。

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