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コロナ禍でも「中秋の焼き肉」 ー台湾から


 「中秋節は家族で焼肉」というのが台湾の風習だ。スーパーに焼肉用品が並び始めると中秋節が近いことを思い出させる。一風変わったこの風習だが、1980年代後半、ある企業が「中秋節は家族で焼肉を」と銘打ち、焼肉のタレを大々的に宣伝したのが起源だ。この広告の大成功で社会に定着し、中秋節当日は道端の至る所で焼肉をする光景が見られるようになった。

 今年、この風習をめぐって論争が起きた。台北などの都市部では、家の軒先にある庇(ひさし)を隣家とつないでアーケードのようにした「亭仔脚」という建築様式が見られる。暑い夏には日陰を作り、雨の日も傘をささずに歩ける便利なものだが、このアーケード部分は個人の土地なのである。それを街ゆく人たちの利便性のために提供しているにすぎない。

 コロナ禍の中、政府は「私有地以外での屋外焼肉禁止」とお触れを出した。ところが登記上は「亭仔脚」も私有地だから、街中で焼肉の光景が広がることになり感染防止対策にならない、と問題になった。

 そこで政府は「屋外での焼肉は一律禁止」と打ち出したがこれもまた不評。もうもうと煙が出る焼肉を、どうやって室内でやれというのか、という具合だ。

 最終的には「感染防止対策が最優先」となり、屋外での焼肉は全面禁止で落ち着いた。しかし、庶民も長年の習慣を簡単にはやめられない。当日は肉を焼く煙があちこちのマンションのベランダから立ち上った。