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ローマ法王の“パパストロイカ”の行方


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独週刊誌シュピーゲルのタイトル記事「法王と忌々しい性」

 世界に約12億人の信者を有するローマ・カトリック教会最高指導者、ローマ法王フランシスコの要請を受け、世界の司教たちが「家庭と教会の性モラル」(避妊、同性婚、離婚などの諸問題)に関して信者たちにアンケート調査を実施した。

 その結果は今年10月5日からバチカンで開催予定のシノドス(世界代表司教会議)で協議されることになっている。同シノドスのテーマは「福音宣教から見た家庭司牧の挑戦」(仮題)となっている。

 それに先立ち、独週刊誌シュピーゲル(1月27日号)は独司教会議が実施してきた意識調査(1月末)結果をまとめ、報道している。

 同誌は、ドイツで保守的なバイエルン州の信者調査結果を報じているが、それによると、「教会の教え」と「信者の現実の生き方」はまったく異なり、「教会の教え」が信者の生活に適応されていない現実が鮮明に浮かび上がってきている。

 例えば、「教会の教えに従って生きているか」という質問に対し、「イエス」と答えたのは31%に過ぎず、69%は「ノー」だ。離婚・再婚者に対して「サクラメントを受けることができるか」の問いに対しては、63%は受けると答え、12%は教会から拒否されたという。教会の教えでは離婚者、再婚者への聖体拝領は許されていない。「許可されていない方法(避妊ピルやコンドーム)で出産制限を実施した場合、罪か」の問いには、86%が「罪ではない」と考えている。カトリック教義では、避妊ピルやコンドームの使用は禁止されている。

 簡単に説明すると、3分の2以上の信者が「教会の教え」を遵守していないか、信じていない、という結果なのだ。「教会の教え」と「信者の現実」の間に大きな亀裂があること自体、新しいことではないが、教会指導者が信者たちに影響を与えることができると信じることは、まったく幻想に過ぎない、という現実が明らかになったわけだ。聖職者にとって、大きなショックだろう。

 南米教会の初のローマ法王、フランシスコ法王は教会の教えと信者たちの現実の亀裂をどのように修正しようとしているのだろうか。囚人の足を洗い、法王宮殿を避け、ゲストハウスに宿泊し、清貧の生活をアピールする一方、格式ばったバチカン法王庁の慣習を拒否し、信者たちとのスキンシップをアピールしてきたが、2000年続いてきた教会の教えを修正、改革はまだ何も実施していない。例えば、聖職者の独身制についてもその見直しを示唆してきたが、まだ実行されていない。

 今年3月19日で法王就任1年目を迎えるフランシスコ法王は本当に教会を改革しようとしているのか。具体的にいうと、パウロ6世は1968年、避妊手段の使用を禁止し、ヨハネ・パウロ2世もコンドームの使用を禁止し、再婚者、同性愛者に対してははっきりと差別してきた。フランシスコ法王はそれらの教会の教えを撤廃するつもりなのだろうか。

 フランシスコ法王は昨年4月、8人の枢機卿から構成された提言グループ(G8)を創設し、法王庁の改革<使徒憲章=Paster Bonusの改正>に取り組むことを明らかにした、シャドー・キャビネット(影の内閣)といわれるG8のメンバーを中心に、教会改革を進める考えといわれてきた。

 独週刊誌は「フランシスコ法王の改革をソ連最後の大統領ゴルバチョフ大統領のペレストロイカ(露語で改革)に倣って、“パパストロイカ”(Papastroika)と呼ぶ人がいる。ペレストロイカが改革ではなくカオスをもたらしたように、法王の改革も教会をカオスに陥れるだけではないか、というシニカルな受け取り方だ」と説明している。

 信者たちの3分の2以上は教会の教えを実施していないと公言している。そのような信者たちが集まった教会は宗教団体としてはもはや機能しないのは当然かもしれない。

 フランシスコ法王の目の前には2つの選択肢がある。3分の2以上の信者たち(多数派)の願いに合致するために教会の教えを修正するか、3分の1以下の信者たち(少数派)を相手に教会を運営していくかの2通りの道だ。

 フランシスコ法王は「教会は民主主義ではない」と述べている。換言すれば、教会は多数派の意見に呼応して、その教えを修正する考えはないというわけだ。その一方、フランシスコ法王は昨年11月28日、使徒的勧告「エヴァンジェリ・ガウディウム」(福音の喜び)を発表し、信仰生活の喜びを強調している。固陋な教条主義には一定の距離を置いているわけだ。  いずれにしても、フランシスコ法王が要請した信者たちへのアンケート調査は教会の現実を赤裸々に暴露する結果となっている。

(ウィーン在住)