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ルクソールの王家の谷ーエジプトから


地球だより

 エジプトを旅して格段に印象が強い場所が、同国王朝時代の首都ルクソールのナイル川西岸にある「王家の谷」だ。草木一本もない巨大な岩山の数々を眼前にしたショックは、忘れることのできない光景として脳裏に刻み込まれている。

 何よりも、湿度が0%と思われるような全く乾燥し切った、しかも無限に突き抜けるような快晴の空が天にも届かんばかりに青々として広がる。全くの新感覚に、ここは天国かと思わされるほどの気持ち良さが襲うのだ。

 ここからは何と、古代エジプトの新王国時代の王たちの墓(王墓)24を含む64の墓が発見されている。まさに墓地群だが、墓地がどうしてこんなに気持ちよく魅力的なのか。

 王たちは死後、太陽神ラーから永遠の命を授けられるが、王家の谷の岩の山々も、そんな考え方を反映しているのかもしれない。一瞬、「ここは天国では!」と思わされる感覚になるのだ。

 格段に異彩を放っている王墓がハトシェプスト女王葬祭殿で、エジプトで唯一の女王の神殿。当時の伝統は、王位継承権はファラオの第1王女の夫と決まっていたが、彼女はそれを押しのけて男性として自ら王位に就いたとされている。

 しかしこの女王葬祭殿が注目を浴びたのが、邦人10人を含む62人が殺害された1997年発生のルクソール事件だった。政府はこの事件を契機に過激派対策を強化したが、王たちが永遠に眠る天国は守られねばならない。

(S)