学力重視の東北大学型AO入試 大学入試改革でROJE主催フォーラム

東北大学教授の倉元直樹氏が講演

東北大学教授の倉元直樹氏

NPO法人日本教育再興連盟(ROJE)主催の五月祭教育フォーラム2024が、対面とユーチューブ上で開催された。大学入試改革が叫ばれる中、今年のフォーラムでは『再考総合型選抜~評価されるべき「学力」に迫る~』と題して、東京大学本郷キャンパス法文2号館31番教室で行われた。「『大学入試学』の誕生~大学入試学会と東北大学型のAO入試~」と題して大学入試学会理事長・東北大学教授の倉元直樹氏が講演した。以下は講演要旨。(太田和宏)

問われる高校での学び

計画的な入試対策が必要

昨年12月17日に「大学入試学会」を設立した。大学入試をテーマにした学術団体で中心課題を現在の大学入試の問題点に置いている。大学入試のアカデミックな価値の向上と大学入試を支える人材のキャリア形成も担っている。大学と高校は同じ入試を扱っていても注目点が違う。

大学入試の在り方に対する検討は個人研究者、大学の研究者により、エビデンスに基づいて行われている。高校関係者が膝を交えて一堂に会し、フラットに意見交換できる場となっている。「大学等協議会」は大学または大学内の機関。「高等学校等協議会」は高校または複数の高校や有志の高校教員で作る組織。大学入試学会は個人会員111人、大学等協議会加盟10機関、高等学校等協議会加盟12機関で構成されている。

令和3年度からAO入試が始まった。そこから発展して総合型選抜になった。AO入試の起源は慶應大学湘南藤沢キャンパスで1990(平成2)年度に導入したこと。2000年度に国立大学が開始してから全国の公立、私立にも急速に普及した。

AO入試は大学入試の多様化の中で出てきたもので、入試の自由化を進めるもの。個々の大学の入試をアドミッション・ポリシー(大学が求める学生像)に基づいた自由設計入試を推し進めるものだ。

学生集団の多様化を目指して、国立大学などが導入した共通一次学力試験は非常に評判が悪かった。受験機会を一本に絞ったのは良しとして、選抜方法の多様化が減り、学力検査のやり方が悪いとバッシングを受けた。学力検査を変えることによって教育や入試が劇的に変わるのでは、というすごく楽観的な立場と発想で入試改革が行われてきた。

東北大学は、まったく別の発想で「AO入試(総合型選抜)」を進めてきた。東北大学のAO入試だが、2000年度から現在まで20年続いている。入試の世界では、続けるということが非常に大事で、受験生にとってコロコロと受験の形が変わるとそれに対する準備が非常に難しく、非常に迷惑なことだ。

東北大学の入試はAO入試に重点を置いているのが特徴。①AO入試は第1志望の受験生だけが挑める特別な機会。受けてみようかな、でもOK②思いを伝える場。面接とか志望理由など③学力重視。東北大学は研究大学。高校時代にどれだけ、何を勉強してきたのか。きちんと学んでいるか④一般入試より難しい。AOで落ちて、一般で合格する人が1割を超えている。約300人いる。2期3期、駄目だったら、来年受けても大丈夫⑤一般入試まで含めて入試対策は計画的な勉強が必要――ということだ。

研究大学としての東北大学の入試設計として、大学側は学力が高い受験生を望み、同じ学力だったら強い学習意欲を持った学生を求めている。受験生側からすると不合格になった時のリスク管理が問題になる。受験生に対して、総合型選抜のための特別な準備は要らないと言っている。普通に考えると、総合型選抜で不合格になったら、一般選抜に向けて準備することになる。だが、東北大学の一般入試には特別な準備は要らない。高校できちんと学んできたかを問うので、試験対応の一貫性を持っているからだ。

高大接続改革が個別の大学を揺さぶった。里見進東北大学総長(当時)の発言によって総合型選抜による入学者数を18%から30%に引き上げた。国立大学協会に3割という数字だけ模倣され、中身のないまま、拡大している。設計として学力重視の東北大学型AO入試として、さまざまな工夫をし、各大学で良いものがあればそれを取り入れ、6年かけて実施・達成してきた。

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