食べた野菜と果物の種を育てた記録やタマネギの皮で作ったライオンの顔など、子供の探求心と発想力がにじみ出た夏休みの優秀作品を一堂に集めた「第71回秋田市児童生徒作品展覧会」(主催・秋田市教育委員会)が8月31日と9月1日の2日間、秋田市文化創造館で開かれた。昨今の教育で注目されている「探求型学習」につながるものとして関心が集まった。(伊藤志郎)
身近な話題に着目した力作
「探求型学習」視野に関心高く
秋田市内の小学校41校と中学校21校から、理科、社会科、図工(立体と平面)、家庭科、作曲など9部門600点以上が展示された。
「自由研究」コーナーの「たねのかんさつ記ろく」。小2の女の子が家で食べた野菜と果物の種の大きさや色が違うのに気付き、種から芽が出る様子を熱心に観察し、それを丁寧に記録した。スイカ、カボチャ、トマト、メロンなど8種類で、アボカドはかなり芽が出たが出ないものもあった。「今回は水だけで育てたが、次は土に植えてみたい」と振り返る。
出展された600点のテーマは多岐にわたるが「いずれも身近な話題に着目し、それを探求しようと実際に観察・実験した実行力が尊い」と来場者らの評価を受ける。
「アゲハチョウの観察」(小1)では「おばあちゃんの家のグレープフルーツの葉っぱについた幼虫」に関心を持ったことがきっかけになった。幼虫が成長し蛹(さなぎ)になり「羽化の瞬間」に出合えたことが一番うれしかったという。
海洋プラスチック、雑紙救出大作戦、通学路を調べる、花火の色はなぜ違う、スピード味噌の本を見て実際に挑戦した(小5)、5種類の液体をつけたTシャツの汚れをとる――など、記録・表現する力も優れている。
図画の立体部門では、高さ1㍍もあるキリンや大きな鯨が目に付いた。半分に切ったスイカを紙で作り、断面に実際のスイカの種を使いカブトムシが汁を吸うように制作した小学校1年生の「発想力が素晴らしい」と来場者の声。
また例年見られる「おもしろ恐竜」では、スプーンやクリップ、洗濯挟み、ペットボトルのキャップ、プラモデルの部品などを集めてこげ茶や金色のスプレーで仕上げた作品が興味を引いた。
冒頭の「たまねぎライオン」は、顔を紙粘土で作り、目玉にビー玉を入れ、ふさふさのたてがみは薄茶色の普通のタマネギの皮に紫タマネギを少し混ぜて、野生の王者の風格を表現していた。
理科部門では、80匹もの昆虫の標本ばこ(小4)、海洋ゴミでミュージック(ペットボトルに入れて鳴らす)、初めて行った「函館町探検」(小3)が目に付いた。そして最近の話題を取り上げた防災グッズ関連と新紙幣も着眼点が鋭いと感心させられた。
ほろりとさせられたのが、秋田市で私の色を探す旅に出た記録(小5)。「両親が6歳の自分に宛てて書いた幼稚園の卒園文集」を見て、「とてもきれいな文章で、まるで物語のようでした。心が温かくなりました」と書き込まれていた。最後に「新しいステージも、沢山の色できらきら輝けますように」とあったメッセージから上記の旅を思い付いた。親が丁寧に、心を込めて書いてくれたからこそ、小学校5年生の胸をきゅんとさせ、発想と行動する力が芽生えたのだろう。
ほかに、自分の気持ちを込めた書写、生活の中から何かを見つけた生活科の作品もあったが、それぞれに個性を伸ばした楽しいものだった。娘と一緒に来た母親は「みんな面白い作品ばかりで興味が湧きました」と言いながら、次々に作品を見て回っていた。