1874年の立教学院創立から150周年を節目とし、立教大学は6月23日、防災・減災への取り組みを考える「ALLとしま×立教WAKUWAKU防災フェス」を同大池袋キャンパスで開いた。同学院が区と連携する初めてのイベントで、都市型防災対策に関する講演会のほか、避難所体験、はしご車搭乗体験など地域住民が楽しく学べるコーナーも用意された。(石井孝秀)
地下鉄早期再開で帰宅困難対応
災害対策は「ケース・バイ・ケース
東京都は2022年、都心南部にマグニチュード7・3の直下地震が起きた場合の主な被害状況をまとめた。豊島区がホームページで公開している区内の被害想定によると、建物は816棟が全壊、死者は55人と想定されている。
さらに物的・人的な被害のみならず、大都市の池袋では多数の帰宅困難者が出る可能性が高い。都市という特性を視野に入れた防災対策は必須だ。
立教大学の池袋キャンパス内には、防災体験ができるブースやコーナーが多数出展。「リアル避難所体験」のコーナーでは、段ボールベッドなど実際に豊島区で使用される機材が設置された。1人分のスペースは2平方㍍で、スタッフによれば「組み立てるのも難しくはなく、実際の避難所は地域で運営してもらうので、地域の人たちに来てもらい、段ボール製の避難所の作り方などを直接伝える取り組みも進めている」という。
高所で救助・消火活動を行うはしご車への搭乗体験コーナーには、小学生以下の子供を連れた保護者の姿も目立ち、楽しみながら防災について学んでいた。はしご車の先端に体験搭乗した男子小学生は「すごく高くて、空が近く感じた」と興奮気味に話していた。
防災フェスで開かれたシンポジウムでは、同大で客員教授を務める池上彰氏が進行役となり、各分野で災害対策に従事する担当者たちが出席。都市空間で各自が実施している有事への備えについて紹介した。
高層ビル「サンシャイン60」などの安全管理を担当するサンシャインシティ・ビルマネジメントの施設管理部リーダー・鶴田雅史氏は「震度基準を設けており、一定規模以上の地震が発生した際には建物全体の体制を災害時の体制に切り替える」と説明。揺れによる建物への損傷や火災の発生、負傷者の有無を即座に確認といった初動対応を実施した上で、安全が確認されれば、災害時の受け入れ場所としても機能させる。備蓄の確保はもちろん、施設内の多数のテナントにも有事の際は日用品などの連携ができるよう準備している。
また、災害時に同ビルの展望台は「高所見張り所」として消防隊に提供される。鶴田氏が「多数の通報が寄せられた際、実際に消防隊が展望台から周辺をぐるっと見渡す」と話すと、司会の池上氏は「サンシャインの建物を巨大な火の見やぐらにするという発想も、都市型に特化している」と評した。
東京地下鉄の安全・技術部次長の木暮敏昭氏は、大地震が発生すると電車の脱線リスクがあるため、「大きな揺れが発生した場合、電車を速やかに止めるシステムがある」と解説。東日本大震災時は、東京に最大震度5強の揺れが来たが、緊急システムが初期微動の時点で有効的に働き、強い揺れが発生する前に東京メトロすべての電車が止まっていたという。
さらに「最大の帰宅困難者対策は早期の運転再開」とも強調。以前は運転再開のための安全確認で、全区間を歩行点検していた。だが、揺れが大きくなかった箇所にも時間を割いていたという反省から、現在では沿線に散りばめた地震計の計測結果を基に、震度の大きさによって点検方法を変え、点検作業のスピード化につなげていると語った。
立教学院の福田裕昭理事長によると、11年3月11日の東日本大震災の時、立教大学の池袋キャンパス内に帰宅困難者を多く受け入れ、食堂でも炊き出しが行われたという。防災フェスのあいさつで、この対応を振り返り、「もしこれが1カ月前の2月11日だったら、学内は入試の受験生でいっぱいだった」とし、その対策に追われていたはずだと指摘。災害対策にはケース・バイ・ケースで備える必要性があることを訴えた。