「サイエンスフェスタ」に向け創造探究授業
「『みつけるきめるつむぐ』自他の意志を尊重する子どもの育成」をテーマに宝仙学園(冨田道生理事長)小学校で公開授業研究会がこのほど開かれた。真言宗豊山派宝仙寺を母体に仏教精神に基づいた教育と共に、タブレット端末を活用しながら創造探究学習にも力を入れている。3年生児童76人の創造探究授業(国語×理科×図工)、お祭りプロジェクト「サイエンスフェスタ」開催を控えた取り組みを紹介する。(太田和宏)
児童自身が考えて準備
幼児にも分かりやすく工夫
教室に入った途端、なんだこれは?学級崩壊かと思わされる騒がしさが目と耳に飛び込んできた。4、5人のグループに分かれて討論の真っ最中だ。児童たちが使っているタブレット端末には「ロイロノート」、すべての授業で使える「思考力」「プレゼン力」「英語4機能」を育てる授業支援クラウドが搭載されている。
雑然としているかと思うと、中村優希教諭の掛け声と共に正面を向き、クラス代表の掛け声と共に授業始まりのあいさつ、きょうの授業の課題、目当てを見定め、討論に入る。グループでまとまった意見を発表する。グループの中だけでなく、クラス内にも多様な意見があることに気付き、自分にできること、グループでやることなどをタブレットに書き込むと、教室正面の大画面に映し出され、クラス全員で共有できるようになっている。授業の終わりもクラス代表の掛け声と共にあいさつ、タブレットをしまい、授業が終わる。
3年竹組38人の探究授業の風景だ。この日行われた授業は、保護者による授業参観日に行われた「プレ体験会」からフィードバックされた項目の中で、改善できること、準備できることについてグループと個人で考え、発表する時間だ。
授業の総評を行う「分科会」で理科専科の吉金佳能教諭によると、創造探究授業は理科を核として国語、図工の授業と重ね合わせて教科横断型授業を行っている。お祭りプロジェクト「サイエンスフェスタ」を開き、宝仙学園の幼稚園、近隣の幼稚園、保育園に通う未就学児やその保護者らに来てもらい、楽しんでもらうことを大きな目標にしている。「やってみたい」気持ちから始まる授業を設計しているという。
3年生の児童たちに身に付けてほしい資質・能力について、吉金教諭は「理科の授業や実験で得た知識・能力、(S極とN極は引き合い、SS、NNは反発し合う、クリップなど一部の金属も磁石にくっつく)磁石の不思議をゲームに仕立てる、植物の研究成果として葉っぱのしおりを作製、植物の不思議な世界を発表する。1年間学んできたことを科学の迷路として楽しんでもらう、という点に子供たちが注目してほしい」と語った。
同学園の幼稚園、4月から入学する就学前の幼児や保護者に対して「理科はこんなに楽しいんだよ」と分かりやすく伝えることを児童たちは考えて準備している。
また、国語を担当した3年生担任の千葉忠茂教諭は、「来てください、という気持ちを如何(いか)にして伝えていくかを考え、催しの目的、内容、伝える相手を意識しながら、ポスターで表現したり、手紙を書いたりした。幼稚園に出向き、喜んで来てもらえるように気持ちを込めた言葉を選択することを心掛けて児童たちは準備をした」と語った。
図工の鈴木有美教諭は児童の様子を次のように語る。図工との連携としてシンボルとなるオブジェ(神輿〈みこし〉)をベニヤ板、アルミホイルや段ボールで形作る。どんなものを作るのか、タブレットで検索したり、教科書や図書館の本からアイデアを探したりする児童もいた。グループ議論する中で「家にアルミホイルがあるから私持ってくる」「ぼく、段ボールを持ってくる」など準備するものを決めていく。
「自ら学ぼうとする子ども」と題して桃山学院教育大学の木村明憲准教授による講演が行われた。理科、国語、図工の教諭が探究授業を行うことについて「児童が疑問に思ったこと、手助けが必要な問題に突き当たった時、その場で教諭に質問したり、考え方を教えてもらえることは非常に良いことだ」と、教科横断授業と教科担任制のメリットについて語った。授業の残り時間、催しまでの日数を考慮してスケジュール管理もしている。社会に出て必要な資質能力を身に付けることができる授業になっていたと評価した。