不登校の児童・生徒がカフェ運営

NPO法人「キリンこども応援団」体験企画

焼き菓子セットを購入するカフェの客=2月16日午後、東京・赤坂の日本財団ビル

家庭や地域の関係性が希薄化する中、子供たちの成長をサポートする取り組みが求められている。大阪府泉佐野市のNPO法人「キリンこども応援団」(水取博隆代表)は昨年夏、不登校などでフリースクールに通う子供たちがカフェを運営する体験型企画を4日間実施。その出張店として2月16日には、小学6年生から中学3年生までの17人による一日限定カフェを都内で開いた。(石井孝秀)

「失敗OKの環境」が大切

職業体験は成功体験の場に

「いらっしゃいませ!お飲み物はいかがですか」

日本財団ビル(東京・赤坂)内で開かれたカフェに足を運んだ客たちを、笑顔の子供たちが出迎えた。カフェ「お福wapi」では、コーヒーや紅茶などのほか、クッキーやキャラメルフロランタンラスクといった焼き菓子を販売。小中学生たち自身が商品を考案しており、さらに原価計算や調理、接客なども子供たちの手で行われたという。

当日、同ビルでは「子どもの福祉」をテーマとしたシンポジウムが行われており、シンポ参加者約200人が休憩時間に殺到。焼き菓子の詰め合わせ145箱が見事売り切れるほどの盛況ぶりだった。中学3年生の川崎恋さんは「きょうのためにみんなで商品の受け渡しや声掛けなどの練習をしてきた。最初は不安もあったけど、行列もできてうれしかった」と満足そうに話した。

活動について説明する水取博隆代表 2月5日午後、東京・赤坂の日本財団ビル

キリンこども応援団では、学校に行けない子供たちの学習機会の格差を埋めようと、職業体験の場を提供している。子供たちの特技を生かすことにも重点が置かれ、イラストレーター志望の子供にはカフェのロゴを考案してもらうなど、得意なことを通じて自己肯定感や成功体験を深めるのも狙いだ。カフェ運営以外でも地域のコミュニティーラジオや病院とコラボし、ラジオ放送体験や医療体験なども行っている。

もともと「こども食堂」を運営していた水取代表は、日本財団が進める「子ども第三の居場所」事業の助成を受け、2021年から同法人を設立した。これまで開設した子ども第三の居場所の拠点「キリンの家」は現在2カ所。それぞれ日中はフリースクール、夕方から地域の子供たちが集まるコミュニティースペースとして活動を展開している。

水取代表は最近の子供たちを「失敗を恐れる世代」と表現する。「子供たちはよく『たたかれる』とか『炎上する』という言葉をすぐ口に出す。だからこそ失敗してもいい環境づくりや人間関係が重要になる」。さらに「居場所」とは単なる空間ではなく、そこにいる大人や友達との関係そのものと強調する。「失敗できる環境があるのでチャレンジできる。その信頼関係を長期にわたってつくっていくのが『居場所』だ」

ただ、本当に困っている家庭の子供たちほど、支援の輪に加わることが難しいという。そこで同法人では子供たちへの支援活動のほか、ひとり親家庭や貧困家庭への食材受け渡し事業も実施。自治体と協力し、課題を抱えた家庭を対象とした食材支援の情報を流すことで、子供たちのための拠点案内へとつなげていく仕組みをつくっている。支援のための食材も、地域の企業や農家などからの提供によるものだ。

地域社会との連携が子供たちの未来をつくっていくと同時に、子供たちを将来、地域で活躍する人材へと成長させていく。そして、地域がさらに子供たちを支援するというサイクルづくりを、水取代表たちは目指している。

日本財団ではこのように、子供たちが将来の自立に向けて生き抜く力を育むことを目的とした「子ども第三の居場所」開設事業を全国的に進めており、今年2月に拠点は200カ所を突破した。

同財団によると、学習支援・生活支援を行う拠点のほか、引きこもりを続ける子供たちへの自宅訪問や進路相談などを実施している拠点もある。各地に多様な拠点を設置していくことで、課題を抱える子供たちへのニーズに応えつつ、支援が必要な子供たちの発見の場になることも期待されている。

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