進む教育現場のAI利活用

技術に追い付けぬ文科省ガイドライン

写真は東京都教育委員会が作成したリーフレットの一部。AI技術は想像以上の速さで進化している

AI(人工知能)技術が急速に進化する中、教育現場での利活用のメリットを訴える意見が増えている。一方で、懸念を主張する意見も各方面で噴出している。文部科学省は生成AI利活用の暫定的ガイドラインを公表した。教育現場での利活用は想像以上に速く進み、ガイドラインが追い付けない状況にある。(太田和宏)

学校では「試行錯誤」

教師と生徒が共に考える場を

昨年の3月、「生成AIの利活用についてガイドラインが必要だ」として文科省の担当部署で話題に上り始め、4月初めから作業に入り、7月に出来上がった。

生成AIの利活用について「学校での使用は全面的に使用禁止にすべきだ」という意見と「1人1台端末が全国的に広がり、自由に使わせるべきだ」と推進する両方の意見が噴出し、非常に振れ幅の広い議論になったという。最終的に参考資料、一定の考え方を示す形に収まった。

文科省初等中等教育局学校デジタル化プロジェクトチーム(PT)リーダーの武藤久慶氏は先日行われた「超教育オンラインシンポジウム」の中で生成AIの教育利用の方向性について以下のように語っている。①活用が有効な場面を検証しつつ、限定的な利用から始め、懸念やリスクに十分な対策を講じることができる一部の学校で、パイロット的な取り組みを進め成果・効果を検証することが必要②学校外(自宅など)で使われる可能性を踏まえ、すべての学校で情報の真偽を確かめる(ファクトチェック)の習慣付けも含め情報活用能力を育む教育活動を充実させ、AI時代に必要な資質・能力の向上を図る③教員研修や校務での適切な活用に向け教師のAIリテラシー(理解・活用能力)向上や働き方改革につなげる必要がある――として学習指導要領に則(のっと)ったガイドラインを作成できたという。

文科省のガイドラインは非常に使いづらいものとなっている。また、コロナ以前から1人1台端末を進めてきた自治体の学校ではネット環境や端末、使っている機種、導入しているソフトなどが更新時期に来ており、より使い勝手の良いものを求めている。東京都教育委員会は学習用端末を文具として活用でき、「教師が変わる学校が変わる子供が変わる」を合言葉に現場で使いやすいリーフレット“手引書”の形で令和3年の春に作製している。概(おおむ)ね文科省のガイドラインと同じだが、ロードマップに加え、写真や図表を多く使用、分かりやすく解説している。全国の小学校、中学校、高等学校でも使える“模範的”リーフレットになっている。使用におけるトラブルには教師が適切に判断、その都度注意する。試行錯誤の連続で子供たちが自由に使い活用範囲が広がることを目指している。

端末機器、AI技術、出版社などが作成している学習アプリ、どれを取っても日進月歩しており、市場には多数出回っている。どれを選択するか、迷っている学校も多い。「コロナウイルスの蔓延(まんえん)による“休校の嵐”が吹き荒れた頃。右も左も分からず、とにかく導入したが、近年、ネット環境、端末機器とも更新の時期に来ている」とインターネットによる「チェルマガジンセミナー」の中で東京都渋谷区立西原小学校の曾我泉校長が語っている。

また、同校長は、先生たちが「できることから順番に」を合言葉に、出欠の点呼、校務の教職員間での連絡・共有などで徐々に使えるようになってきている。だが、課題も多く、特に、学習時間外での遊びに使っている子供が居た場合の指導は難しい。あまり厳しくすると、ネットを介した学び、「個別最適な学び」に向けた生徒のやる気を削(そ)いでしまう。かといって指導しなければ、自分勝手な使い方になってしまうからだという。

今後、AI機器の利活用は、出欠確認時に、元気にしているかを確認したり、児童・生徒が分からないことを先生に質問できるようにしたりする、会話や相談の環境を整えることが大事だ。教員と児童・生徒の間で端末の利活用について、先生が一方的に考えを押し付けるのではなく、意見を出し合い、共に考える場を設けることも必要になってくる。

出版社などが作成している学習アプリも充実してきており、一人一人の学習履歴や興味関心に応じた宿題を作成したり、自学自習がやりやすくなってくるだろう。学習の継続状況やつまずいたところに応じて、児童・生徒に応じた課題を提供することもできるようになる。新しい時代に向けた児童・生徒の学習の意欲を育んでいくことが必要だ。

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