独創的な彫刻芸術を表現 本郷新記念札幌彫刻美術館で「雪像彫刻展」


造形作家・熊谷文秀さんの作品「Holes」
彫刻家・河 ゆかりさんの作品「包む」

昨年末までの暖冬とは裏腹に今年に入ってから北海道は連日、氷点下の寒い日が続く。道内各地では雪や氷を題材にしたイベントが目白押しだ。そうした中で1月下旬、札幌市内にある本郷新記念札幌彫刻美術館ではプロの彫刻家や工芸家らによる雪像彫刻展が開催された。(札幌支局・湯朝肇)

雪の面白さ、魅力を発信

子供対象にオリジナル紙芝居

「雪は冷たくて白一色ですが、私は今回、『包む』をテーマにした作品を作りました。前後左右いろいろな角度から見ても表情が違う、それでいて温かみがあり、何でも包んでくれる愛をモチーフに作品を考えました」――こう語るのは彫刻家の河﨑ゆかりさん。1月26日から28日までの3日間、札幌市中央区にある本郷新記念札幌彫刻美術館で開かれた「さっぽろ雪像彫刻展2024」の出品者の一人である河﨑さんは、9年前から同彫刻展に関わり、以来、出品を続けている。

「Holes(穴)」をテーマにしたのが造形作家の熊谷文秀さん。雪で固めた円柱の所々に円形状の穴が開いている抽象的な作品。雪穴を通して見る向こうの景色が、周囲の景色とは違う空間に見えてくるから不思議だ。熊谷さんは「何か特別な意味を込めてこの作品を作ったわけではありません。見る人が何かを感じてくれればいい。ただ、雪が持つ面白さや魅力を知ってもらえればありがたい」と説明する。熊谷さんによれば、彫刻像は昼間の気温や降り積もる雪の重さで穴の円形が次第に楕円(だえん)形になってくる。そうした自然環境と彫刻像の変化を見ていくのも雪像彫刻の面白さだという。

展示会場で行われたカミシバイズムによるオリジナル紙芝居

会場に設置された雪像彫刻は夕方4時ごろからライトアップされ、光に反射する雪の表情が昼間見る作品と大きく異なるというのである。会場では制作者が彫刻を作る上での苦労話や彫刻を作る際に自ら作った道具を紹介するなど、制作者と会場を訪れる市民が気軽に交流できるのも同展の魅力の一つとなっている。

美術館の名前となっている本郷新は1905(明治38)年札幌の生まれ。学生時代から美術、彫刻に興味を覚え、高村光太郎に師事した。戦後日本の具象彫刻を牽引(けんいん)し、西欧諸国では一般的であった野外彫刻文化を初めて日本に持ち込んだ人物。彫刻の社会性、公共性を重視し、ヒューマニズムに貫かれた野外彫刻の制作に力を注いだ彫刻家である。同記念館は本郷新の意を酌んで2010年から雪を題材にした彫刻展を開催、今年の雪像彫刻展は15回目となる。

同展の特徴は単なる雪像イベントではなくプロの彫刻家や造形作家、木工家だけでなく、それらの芸術分野での活躍を志す学生たちが制作に取り組んでいること。今回も札幌を拠点に活動する彫刻家らが8人、北海道芸術デザイン専門学校の学生らが出品に参加した。

3日間にわたる彫刻展では雪像彫刻の展示のほかに、子供たちを対象にしたカミシバイズムによるオリジナル紙芝居劇や同館館長の吉崎元章氏の講演も実施。とりわけ吉崎館長は「北海道の冬のアートイベントあれこれ」をテーマに、道内のアートイベントの流れを①雪や氷による像や建造物を中心とした冬を楽しむ祭りとしての観光系イベント②電飾や造形作品を冬の屋外に設置③雪を素材とした立体表現としての作品を制作する雪による立体造形系展示④雪国の生活や営み、自然現象と深く関わる新たな表現を探求するコンセプト重視系展示――の四つに区分、特に2000年以降は4番目のコンセプトを重視した展示に移行されつつあると説明する。

毎年2月上旬には、札幌市では大規模な雪像イベントの「さっぽろ雪まつり」が開催され多くの来場者で賑(にぎ)わう。その一方で行われてきた同館主催の「さっぽろ雪像彫刻展」を覗いてみると、「さっぽろ雪まつり」とは、一味違った独創的な雪像彫刻芸術を堪能することができる。

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