動物の気持ち考えた飼育で福祉実践 東京都内で全国学校飼育動物研究大会

日本獣医師会動物福祉・愛護職域担当理事 佐伯 潤氏

「動物愛護法から学ぶ命を預かる動物飼育」をテーマに全国学校飼育動物研究大会(鳩貝太郎会長)が東京都内で開かれた。日本獣医師会動物福祉・愛護職域担当の佐伯潤理事が「日本獣医師会の学校飼育動物支援対策〈現状と今後〉」と題して講演した。
(太田和宏)

「5つの自由」が飼育環境に重要

子供の情操教育上、利点多い触れ合い

簡単に言えば、人と動物の健康管理をするのが獣医師の仕事。犬・猫の病気を治す「動物病院」に従事している獣医師も増えているがまだまだ、ほんの一部だけだ。獣医師には、たくさんの職域がある。大学や企業で医学の基礎研究に関わる動物の健康管理を含め、飼育したり、動物園や野生動物、環境保護の活動をする野生動物獣医師、都道府県や自治体で公衆衛生分野に従事する獣医師、食料品となる肉や魚、安全な食品を提供する産業動物の健康管理をする医師もいる。

佐伯 潤氏

動物福祉と動物愛護について考えてみる。この両者が、ごちゃ混ぜになっているところがある。動物福祉とは、動物の反応を定量的・定性的に評価(科学的根拠)して生活の質と言われるQRL(クオリティー・オブ・ライフ)を改善していこうというもの。一方の動物愛護というのは、主体は人で動物ではない。命を大切にし、かわいがるという人間の心情とか感情を言い表しているもの。英語で言い表せない日本独特の考え方だ。

北里大学と東京動物園協会で行っている、モルモットなどの動物の個体にストレスをかけないで、体温変化、眼球の反応でストレスを測定する方法を研究している。これが、まさしく「動物福祉学」といえる。

人間の医療とか福祉と混同されやすいので、動物福祉という言葉はあまり使われない。アニマルウェルフェアと言われるケースが多い。人が関わる全ての動物を範疇(はんちゅう)とし、飼う環境に配慮、正しく飼育、より良い生活をさせてあげようというもので“動物の利用”は認めている。動物の権利を主張する人は、動物と人の権利は同じで、“動物の利用を一切認めていない”。この点が大きな違いだ。

人は動物や魚を飼育して食べることもある。病気になった時、飲む薬の研究・開発・安全を担保するために実験動物がいる。人と共に生活する愛玩動物も必要。動物園で飼育されている動物もいる。身体障碍(しょうがい)者の補助犬、麻薬探知犬、警察犬など人のために役立っている使役動物や野生動物もいる。獣医師はこれらの動物にいろんな形で深く関わっている。

飼育環境の問題を考慮する時、重要になるのが「ファイブ・フリーダム」(5つの自由)の考え。飢え・渇きからの自由、不快からの自由、痛み・負傷・病気からの自由、本来の動向がとれる自由、恐怖・抑圧からの自由だ。動物の気持ちを考え飼育していけば、動物福祉を実践することになる。

生活の質と言われるQRLは「生活の質」を表すものだ。治療によって動物の生活をより良いものにし、客観的な評価をし、飼い主がどのように考え、対応するかを考慮する指標となる。「生命の質」は末期症状や予後不良な疾患における問題、安楽死の選択、などの問題を判断する基となる考え。

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