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東大五月祭ROJE教育フォーラム 「個別最適な学び」の核心に迫る

安居長敏氏

NPO法人日本教育再興連盟(ROJE)主催の教育フォーラムが3年ぶりに対面とユーチューブ上でZoomを使った形式で開催された。初等・中等教育の改革が実施される中、今年の五月祭では「『個別最適な学び』の核心に迫る~ひとりひとりに向き合う教育のこれから~」と題してフォーラムが行われた。ドルトン東京学園中等部・高等部校長の安居長敏氏の発言要旨は次の通り。(太田和宏)

「自由」と「協働」が教育の根本・原理

ドルトン東京学園中等部・高等部校長 安居長敏氏

先生の仕事は自発的な活動のサポート

ドルトンプランの源流は1920年米国でヘレン・パーカーストが創設した学校。背景には生産性を上げるための管理教育への反発、学習空間と時間割の細分化が子供の自発性や興味を奪っているという、学びの細分化への反発もあった。

パーカーストは「学校の真の使命は生徒を鋳型にはめることではなく、自分の考えを持てるよう自由な環境を整えてやり、学習する上で生じる問題に立ち向かう力をつけてあげることです」という言葉を残している。ドルトン東京学園が目指しているのは、生徒にとってどれだけ自発的で自由な環境を整えられるかだ。

ヘレン・パーカースト(Wikipediaより)

ドルトン東京学園は決まったルールというのがほとんどない学校。子供たちに1カ月分の教材を全部渡して、決めた順番・時間でどう学ぶか、先生と面談しながら、考え、契約(アサインメント)するという方式を取っている。

教育の根本、原理というのは「自由」と「協働」。「自由」は自分の学びはどんどん深め、自由にやっていいよ、ということで個別最適な学びが保障されている。「協働」とは、学校でみんなで一緒になってやることも、たくさんある。必然的に協働的な作業・学びが発生するので、それもやっていこう、ということ。

普通、学校というのは「教科書の内容をしっかり教えるところですよね」と尋ねられることがある。ドルトン東京学園は究極の目標として「15のコンピテンシー」を子供たちに付けてもらいたい。そのために授業があり、学校行事があり、クラブ活動(あまり推奨はしていないが)がある。

先生は「教える人」ではなく「学びをサポートする人」である。時間割は昼休みを境に、授業を受ける集団と学校生活を営む集団とに意図的に分けている。学校生活は縦割りの「ハウス」という異学年の集団がベース。授業は異学年では難しいので通常の学年ごとに100人を4等分して「ラーニンググループ」をつくっている。

教科の授業は「教科センター」といって、「この教室は数学、ここは社会」というふうに決まっていて、リュックを背負った生徒が授業時間ごとに移動する。探究的な学びでは「ラボラトリー」と呼んでいる完全に自由な、教科の枠を飛び越えた学びの時間にしている。

調べ学習の時間は、パソコンを使い自分の心地よいスタイルで学んでいる。パソコンは中学校入学時に「BYOD」(個人の端末を持ち込む)で好きなパソコンを買って使っている。ウィンドウズ半分、マック半分くらいで、学校に来たらインターネットにフルアクセスでき、アサインメントはすべてクラウドに上がっているので生徒がダウンロードして閲覧するスタイルになっている。

制服は標準服で式典の時以外は自由。校則もない。髪の毛を染めようが、イヤリングしようが、化粧しようが自由。個人の判断で学びを深める、他人の自由の邪魔をしない、という範囲で「良い悪い」を考えてもらっている。

教員も学校で1カ所に集まるということがないので、職場用チャット「スラック」で情報共有している。朝会もなく、何か問題がある場合は「月曜に集まってね」と教員たちに連絡する。教員の働き方改革が叫ばれる中、8時から18時の10時間拘束、9時間勤務の年間の変形労働時間制を敷いていて、土日が休み、長期休暇は、ほぼ休みになっている。ICT(情報通信技術)を使って生徒の自由な学びをつくっている。

ドルトンプランの肝は、子供が自発的な学習を可能にする環境をまずつくり、学校の教室、椅子、机、空間づくり、授業の仕組み、先生の働き方、評価の仕方(中間・期末テストがない)など子供が自発的に自分から学べるようにサポートすること。その内容が「アサインメント」だ。

教科書の内容を単元ごと、テーマごとに先生が可視化して生徒に分かるようにまとめた「指示書」として渡している。そこには、なぜこの単元を学ぶのか、小学校でどんなことを学んだか、中学校でこれから何を学ぶのか、高校になって何を学ぶのか、評価はどうするのか、課題を何時間でこなすのか、などすべてのことが書かれている。これさえ見れば自学自習できるようになっている。

ドルトン東京学園の場合、先生の役割は「憧れの大人の姿を見せてください」というのが一番。教科の内容をしっかり教えることは二の次、三の次でよい。子供たちが「この先生と一緒に学びたい、先生のようになりたい」と思わせてくれるような教員であってほしい。

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