東大五月祭ROJE教育フォーラム 「個別最適な学び」の核心に迫る

 NPO法人日本教育再興連盟(ROJE)主催の教育フォーラムが3年ぶりに対面とユーチューブ上でZoomを使った形式で開催された。初等・中等教育の改革が実施される中、今年の五月祭では「『個別最適な学び』の核心に迫る~ひとりひとりに向き合う教育のこれから~」と題してフォーラムが行われた。上智大学総合人間科学部教育学科・奈須正裕教授の発言要旨は次の通り。(太田和宏)

根底に「すべての子供は有能な学び手」

上智大学総合人間科学部教育学科教授 奈須正裕氏

幼児教育が「個別最適」実践の模型

NPO法人日本教育再興連盟(ROJE)主催の教育フォーラムが3年ぶりに対面とユーチューブ上でZoomを使った形式で開催された。初等・中等教育の改革が実施される中、今年の五月祭では「『個別最適な学び』の核心に迫る~ひとりひとりに向き合う教育のこれから~」と題してフォーラムが行われた。上智大学総合人間科学部教育学科・奈須正裕教授の発言要旨は次の通り。
(太田和宏)

根底に「すべての子供は有能な学び手」

上智大学総合人間科学部教育学科教授 奈須正裕氏

幼児教育が「個別最適」実践の模型

日本の伝統的な教育システムは「寺子屋」(個々人に応じて必要な読み書きそろばんを教えた)なので、一斉授業は日本の伝統ではない。日本に一斉指導型の授業が入ってきたのは150年前、明治期に米国から。富国強兵、殖産興業を旗印に国民が同じレベルで同じ方向を向いて、同じように考えてほしいことから始まった。

奈須正裕氏

一斉画一的で没個性的な教育のあり方は「おかしい」ということで子供一人ひとりの要求に根差した個別最適な学習の保障という考えは100年以上も前から海外では実施されていた。教科の縦割り、暗記中心、書物学問をやめよう、もっと実社会の中で問題解決する、価値ある学びをつくろうという動きだ。これが発展して個別最適な学びの流れになった。日本でも奈良女子高等師範学校の付属小学校で1920年代に「独自学習」という形で始まっている。

個別的というのは同時に自律的でもある。一人ひとりが自分で考え、自分に合ったやり方で学習すること。今の学校体制で特別支援学校の子供たちは一斉指導で学ぶことができず、「理不尽」な扱いをされてしまう。「もっと公正な個別最適授業を行うべきだ」と不満が出てくる。

山形県天童市で6年生の社会科、歴史の授業で縄文から弥生時代に流れていくあたりを個別最適授業でやった。子供の能力とか関係なく、環境をつくって、ルールを教えると子供たちはすぐできる。独りでやる子もいれば、複数人でやる子もいる。協働というのは先生が仕切ることもあるが、子供が自発的に行うこともある。誰と、どんなふうにやればうまくいくかということも、子供たち自身が分かってくる。紙でやる子、コンピューターでやる子、いろいろいる。「こんな授業どうやってやるんだ」「どうやって教えるのか」という質問も先生から出てくるが、先生が教えようとしなければ、子供たちは学ぶようになる。

35人学級で個別最適な学びを実践するのは難しいと言うけれど、幼稚園ではごく普通に30人学級で実践している。幼稚園は「子供はすべて有能な学び手だ」という子供観に立って運営している。子供は自分で学ぼうとしているし、学ぶ力を持っている。環境を整え、子供が必要なものを取りに行って、使った後は片付けることができる。そのように任せることで5歳児でも学びができている。先生はしっかりと見て、うまく学べない子供だけを支援してあげればいい。うまく学んでいる子供に余計なことはしなくていい。

幼稚園で「遊び」だったものが小学校になると、「学び」となり、黒板の方を向いて、「手はおひざ、お口チャック」と言って先生が前に立って教えようとする。そうすると先生から、個々の子供が見えなくなる。先生の質問に手を挙げて、当てた子供だけが答える。子供は先生に忖度(そんたく)して、指示待ちするように育ってしまう。

算数で図形を学ぶ時、普通の学校では、「きょうは色板」「あすは棒」というふうに、先生が時間を刻んで、順番を決めて活動を一斉にやるという授業をしている。幼稚園みたいに、教室を3等分して色板コーナー、棒コーナーなど分け、子供たちがコーナーを選んで、判断して自分のペースで自分の活動をする。自分から環境にアクセスして時間を刻み、学んでいく。誰が誰と仲良しで、一緒に学ぶと、うまくいくということが先生も子供にも見えてくる。

個別最適な学びはデジタル必須ではなく、アナログでもできる。アナログは紙の教科書だけではない。活動もあれば、体験もある、体を使うこともある。デジタルの問題点は視覚・聴覚が優位になり過ぎる傾向があるということだ。

デジタル・アナログ、いろんな感覚も生かして学びに生かしてほしい。アナログでやると、時間、教材を作製するのに、コストがかかる。デジタルになってコストが下がった。本当にできたかどうか、どうやって確認するのか、という疑問もある。昔は検証が難しかったが、今は1人1台タブレットの時代で、写真を撮って、クラウドにアップすれば、何時何分、誰が、どれだけできているか、先生の確認作業がすぐできる。子供もどこまでできたか自分で確認ができる。できない子供にはつい、声を掛けてしまう。あまり早いと、子供がやる気を失ってしまうので注意が必要だ。

特別支援の個別最適な学びの話が出ていたが、幼児教育(幼稚園、保育園、こども園など)の環境による教育も見本として勉強になる。

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