基礎を学び、人生設計に活かそう
早い段階で義務化すべきの声
2023年度から高校で「金融教育」の授業が義務化された。しかし、金融教育は公共教科書の一部でしかなく、授業時間も1週間に2コマのみ。持続可能な社会実現に向けたSDGs、環境問題など昨今の社会問題が重視され、年度の後半で駆け込み的に授業が行われているのが現状だ。生涯を見通して、生活設計を立てる場合、お金の流れを学ぶ金融経済教育は政治・経済・法律を考える基礎となるものだ。(魚田好夫)
小遣い帳使い小学校から関心を持つことが必要
22年4月から全国の高校で使われている「公共」の教科書は1冊平均380㌻で前回15年度検定の現代社会から14・2%増、前々回11年度と比べると19・6%増えた。「必修の公共は週2コマしかなく、後半の経済分野で時間が足りなくなる」という学校も多い。「政治や経済を十分に学ばなければ、社会への批判精神が骨抜きになってしまう」と懸念する声もある。
22年4月から成年年齢が引き下げられたことにより、18歳から、クレジットカードを作るなど、金融に関するさまざまな契約を自ら行えるようになり、金融経済教育の重要性はますます高まっている。高校学習指導要領改訂では、金融経済教育の内容が拡充されている。
金融教育というのは、簡単に言えば、お金について学び、生きる力を育む教育のこと。以前、学校の授業において、お金について学び、お金もうけについて話すことは「世俗にまみれる」という感覚でタブー視していた。金融教育は経済・金融の働きを理解し、それによって自分の生活や社会について考え、より豊かな暮らしを実現できるよう主体的に行動できる態度を養っていこうという内容だ。「公共」の授業数コマだけでは、消化し切れないので、技術・家庭科や学級活動の中に組み入れられるケースも増えている。
金融広報中央委員会が作成した金融教育プログラムでは、「生活設計・家計管理」「金融や経済の仕組み」「消費生活・金融トラブル防止」「キャリア教育」の四つの分野に分けて教育を施すことを指針としている。もっと早い段階の学校教育で義務化すべきだという声も教育関係者から聞こえてくる、重要な内容になっている。
高校に入学して急に金融教育を始めても、身に付くものではない。物心がつき、お金の計算ができるようになる小学校低学年では、お金の価値を知り、お小遣いをためる、もらう範囲内でやり繰りすることの大切さを学んでほしい。中学年では、欲しいものと必要なものを区別し計画性の重要さを学んでいく。高学年では、お金の使い方、商品の選び方、社会保障・保険・金利などの基礎を学ぶ。お小遣いとして親からもらう金額に加え、労働の対価(お手伝いによる)を得ることも金融教育の一端になる。お小遣い帳を付けることとセットにしてためること、合理的に使うことも学んでほしいものだ。
中学校で行われる金融教育の内容としては、お金・時間・ものを大切にするなどの望ましい生活習慣を身に付けたり、金融商品の種類についてや、資産運用におけるリスクとリターンの関係性、ローン・社会保障・保険のより深い理解などについて学んでいく。お小遣いや修学旅行の費用の収支管理を行うなどの体験を通じて金融教育を行うことも必要だ。より良い生涯設計を行う上で、土曜、日曜など時間に余裕がある時、家族で金融の基礎を話し合うことが必要だ。