東大五月祭ROJE教育フォーラム 「個別最適な 学び」の核心に迫る

NPO法人日本教育再興連盟(ROJE)主催の教育フォーラムが3年ぶりに対面とユーチューブ上でZoomを使った形式で開催された。初等・中等教育の改革が実施される中、今年の五月祭では「『個別最適な学び』の核心に迫る~ひとりひとりに向き合う教育のこれから~」と題してフォーラムが行われた。経済産業省産業資金課長兼投資機構室長の浅野大介氏の発言要旨は次の通り。
(太田和宏)

認知特性を掴み、未来に備えた教育を

経産省産業資金課長兼投資機構室長 浅野大介氏

一斉授業という基本設計を変える時

経済産業省の人間が何を話すのかと疑問を持つ方も多いと思う。日本の会社がどれだけ稼ぐ力があるのか、持続的に成長していけるのか、それによって株価が上がり、配当も出てくる。それがつくり出すのは年金資産だったり、個人の資産だったり、給料に反映されたりとか、いろんなもので循環していかなければならない。

浅野大介氏

それらの組織の課題、根っこに当たるのが、一人ひとりの能力開発次第だということになる。結局、幼児、小中学校、高校、大学における教育問題に戻ってきて、大事な話は小中学校あたりで決まってしまう。これからの先行き不透明な未来に必要なのは主体性だ、対話力だ、深く学び掘り下げる力だということになっている。

では、それを実現していくには、どうすればよいのか。これまで、経産省の視点から提言し、活動してきた。2017年、経産省に教育産業室というポジションをつくり、文部科学省が20年代の学習指導要領を構築していた。これを読んで衝撃を受けた。考えていることは一緒ではないか。一人ひとりの能力開発にもっと力を注ぎ、一人ひとりが持つ特徴は違うので、それに合わせた教育が必要だというメッセージを含めて書かれているなと感じた。

全ての小中学生に1人1台のパソコンやタブレット端末を配る国の事業が推し進められ、自分に合った講師が語る講義、自分の難易度に合わせたものや、自分の関心に合わせたものなど、いろんなものを合わせた15分単位の動画を選び取って学ぶという環境が整っている。

ネット環境ぐらい学校にないと何も進められない。「未来の教室」という名前を付け、18年から1人1台パソコンを持っている状態で、高速のインターネットにつなげ、クラウドにもアクセスできるという状態をつくったら、「こんな学校でこんな学びができる」ということを世の中に示せる時代になってきた。学習サービスがイノベーションを整えた環境を続け、全国展開できるようになってきている。そこで経済産業省の出番になる。

学校の教育現場でも同じで、デジタル教科書で学ぶなら、タブレット端末とか、何か、もう1台必要になってくる。そういうものを含めて学校の基本設計を変えなければならない。変えたらどうなるか。こんなふうになる。「対面」「オンライン」「オンデマンド」「ライブ」を組み合わせて利用するという話になる。教育のDX(デジタルトランスフォーメーション)化とは何ですかと問われると四つの学び方を「組み合わせを自在化」する「未来の教室」だと答える。

知識のインプットは一対一の英会話トレーニングをはじめ、自分に合ったペースで繰り返し、講義動画・電子図書・ドリルで知識を習得することに移っていくだろう。しかし、ライブ・オンラインで、スクリーン越しで学校・地域・国境をも超えて議論しようということも成立する時代になっている。そこに向けて子供たちの学びも変えていこう、というのが「未来の教室」プロジェクトの構想だ。

東京都の千代田区立麹町中学校の授業改革は、こんな感じだ。「個別最適」を目指して一斉授業をしない、それぞれ個人が学ぶ、尋ね合う、分からないところは先生に聞く、学びを習得していく。レベルはみんなそれぞれバラバラ、学んでいる中身も皆違う。だけど、授業が始まる前の時間と50分後の自分で、50分間の時間が最大化される「時間の使い方をしようね」というのが麹町中学の学びだ。何がどれだけできるようになった、分かるようになった、という満足感が持てるということだ。

「認知特性」をどのように受け止めるか?「個別最適」というのは、自分のできること、できないことを把握して、自分で学び方を選択し、時間を有効に利用することだ。何をどこまで分かるようになるかという目標設定がない中で時間数だけが決まっている。時間を使うことが目標になる。「何をどのくらい習得するのか」が、小学校、中学校でははっきり定められていない。

誤解があってはならないが、知っていなければ考えられない、知らなければ考えようがないという基本は変わらない。100人の先生がいれば、全員講義のプロにならなければならないという話ではない。めちゃめちゃ講義の上手な先生が3人いたら、その先生の講義を動画でシェアしたらいい。97人は生徒に対して違う関与の仕方ができる。これが「未来の教室」の特徴だ。

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