行政と民間の「協働」を考える 沖縄大学がオンラインなどでシンポ開催

ディスカッションで意見を述べる参加者ら=8月18日、配信動画より

沖縄県の沖縄大学はこのほど、「協働による福祉とまちづくりのゆくえ――行政と市民団体の協働はどうあるべきか――」と題したシンポジウムを対面で行い、オンラインでも配信した。この問題に詳しい川北秀人氏と兵庫県尼崎市こども政策監の能島裕介氏が講演を行ったほか、NPO法人沖縄青少年自立援助センターの金城隆一氏らが登壇し、福祉の現場における行政と民間の「協働」をテーマに議論を交わした。(川瀬裕也)

「いつの間にか『協働』が『委託』に」川北氏

「民間団体との協力で課題解決」能島氏

「対等に話し合うための指標を」金城氏

福祉事業を進める上で、行政と民間との協力は必要不可欠だ。冒頭、主催者の同大福祉文化学科教授の島村聡氏は、近年、行政と民間との連携がうまくできていない現状があるとして、「(行政と民間は)共に一緒の方向を向いてまちづくりをしていこうという姿勢について考えることが大事だ」と同シンポ開催の意義を語った。

その後、全国を回り地方の自治会や町内会の立て直しなどに尽力しているIIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表の川北氏が講演をした。川北氏は長年市民活動に携わってきた経験から、「行政は『助成』や『協働』だと謳(うた)っているにもかかわらず、いつの間にか『委託』になってしまっているケースが多い」と、現状の問題点を指摘する。

「官民協働」で、重要なのは「行政ではできないことを住民が思考を積み重ねながら精度の高い取り組みをしていく」ことだとし、「『委託』ではなく『協働』を目指していかなければならない」と語った。

実際の福祉の取り組みについて、川北氏は沖縄を例に挙げ、「2030年には県内の9世帯に1軒は後期高齢者がいることになる」とした上で、「民生委員の見守りだけでは、とても追い付かない」と強調。全国平均と比べ高齢化率が10年ほど遅いとされている沖縄ですら、「福祉は特定の業種の人だけがやるのではなく、地域総ぐるみでやっていく時代が間もなくやって来る」とし、協働の重要性を訴えた。

続いて、尼崎市で子供教育や福祉に携わる能島氏は、「同じ不登校の子供でも、学校でいじめなどの問題があるかもしれないし、家庭に虐待などの問題があるのかもしれない」と、問題解決の複雑さを指摘。「支庁部局と教育委員会がバラバラに支援するのではなく、教育と福祉の両面でサポートしていかなければならない」と主張した。

その上で能島氏は、市に譲渡された大学跡地に、子供の学習や成長を総合的に支援する施設「ひと咲きプラザ」を設置し、行政として日本財団などの民間団体と協力し複合的な支援を行った実績を紹介。「行政だけでなく、地域を構成するNPOや企業、民間の活動が調和的に発展していく中で、街のさまざまな課題が解決していく」とまとめた。

ディスカッションの時間には、沖縄県内で子供の「居場所」提供などを通して自立支援を行う金城氏が、県内の行政と民間の関係性について、「(県が)民間を下請け扱いしているように感じる」と持論を展開。「本来は(両者は)パートナーだ。しっかりと対話をした中でより良い事業をどうやって一緒につくっていくかを考えるべきだ」と訴えた。

これについて川北氏は、「『協働』は共通の目的の実現のために、責任と役割を共有し、共に汗をかき、成果を共有すること」だとして、行政に対し「ただ業者を選ぶのではなく、地域を育てるために協働するという考えを最上位概念に置いておく必要がある」と提言。これを踏まえ金城氏は、「(行政と民間)お互いが対等に話し合うことができるような明確な指標を共有することが大事だ」と語った。

沖縄県で玉城デニー知事が推し進める「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」における協働の実績を見ると、令和3年度においては473件の事業のうち最大割合の47%に当たる223件が「委託」となっている。同シンポで改めて「協働」における行政と民間の在り方が問われることになった。

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