札幌市内での交流会や街頭行進に参加
北方領土返還運動の強調月間となっている8月下旬、根室管内の高校生が札幌を訪れ北方領土返還運動の啓発運動を体験した。札幌駅南口駅前広場での署名活動や交流会、市内での街頭行進に参加するなど北方領土に隣接する高校生にとって、北方領土返還運動への意識を高める場となった。(札幌支局・湯朝肇)
啓発運動に触れ意識高める
「頑張ってね」の声に手応え
「私は元島民4世ですが、祖父が一生懸命に返還運動に携わっている姿をよく見てきました。今回、札幌を訪れNプロジェクトの体験活動に参加して返還運動の大切さを理解することができました」――こう語るのは根室管内にある中標津高校1年生の須崎ななみさん。8月24、25日の2日間にわたって行われた札幌での体験活動では、根室管内にある四つの高校から各1人ずつ4人が参加、1日目は元島民の在住者が多い富山県が設けている北海道富山会館を訪問。
また、2日目は札幌駅南口駅前広場での署名活動、札幌近郊在住の北方領土高校生サポーターとの交流、さらに同日開催された北方領土返還要求北海道・東北国民大会にも出席し、街頭行進にも横断幕を掲げて一緒に参加した。なお、街頭行進に根室管内の高校生が参加するのは今回が初めて。
ところで須崎さんが語る「Nプロジェクト」とは正式名称が「北方領土プロジェクト“N”」のこと。北海道北方領土対策根室地域本部が高校生を対象にした令和3年度から5年度までの企画。その趣旨は、北方領土に隣接する根室管内の高校生が率先して領土問題に関心と興味を持ってもらうため、高校生が自ら企画し、啓発活動を行う機会の提供と支援を行うというもの。
ちなみに、“N”とは根室(Nemuro)で、次世代(Nextgeneration)が、北方領土(Northernterritories)について取り組む事業の頭文字に由来する。
具体的には、根室管内にある6校の高校で関心のある生徒たちが、オンラインなどで一堂に会し、北方領土返還の機運を高める企画作りや地域の関心を高める基盤づくりを行っていく。活動内容は、管内の高校生に関心を持ってもらうための啓発資材の制作や啓発活動の体験に参加する「高校生Nサミット」と高校の北方領土に関する部活動(Bukatu)の支援を通じ、広域的な(Broadarea)返還活動と共にふるさと教育の強化(Boost)を目的とした「Bタスク」を二大柱にしている。
今回、根室管内の高校生4人が参加した体験活動は二大柱のうちの一つ「高校生Nサミット」の一環で、4人の体験活動はその後の管内でのパネル展報告や今後の企画作りに反映されていく。同プロジェクトを担当し、生徒を引率してきた根室地域本部の伊勢治正主幹は、「これまで返還要求運動の中心を担ってきた元島民の平均年齢は86歳を超え、返還運動の次世代への継承が緊急の課題になっています。今後、全国の先頭に立ち返還運動の中心を担う根室地域としても運動を引き継ぐ後継者の育成として高校生に焦点を当てた取り組みが必要。今回は管内6校のうち2校の生徒の参加は無理でしたが、よい刺激になってくれると思います」と語る。“N”プロジェクトは今年度が最終年度になっているが、根室地域本部としては事業の継続を求めていく方針だ。
今回、参加した高校生に感想を聞くと「札幌駅前広場での署名活動では止まって書いてくれる人が少なかったですが、『頑張ってね』と声を掛けてくれる人がいて嬉(うれ)しかった」(羅臼高校2年生の桜谷匠太郎さん)、「街頭行進にスタートする前に鈴木直道・北海道知事から激励を受けてよい思い出ができた」(根室高校1年生の類瀬智人さん)、「交流会で札幌の高校生と領土問題で知り合いになり、これから輪を広げるきっかけができたのは成果の一つだと思う」(中標津農業高校2年生の佐藤天さん)などそれぞれが今後の活動に手応えを感じた様子。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で北方領土返還が遠のいた感は否めないが、若い世代への期待は高まるばかりである。