小学生の応募作が九谷焼の絵皿に

石川県加賀市の九谷焼美術館作品展

加賀市長賞に輝いた「みどりのきをのぼるくわがた」(上)と、審査員特別賞の「アリの世界」(下)

作家が加筆、芸術作品に激変

特例で「アリの世界」が審査員特別賞

古九谷の名品や現代作家の作品を収集・展示している石川県九谷焼美術館(石川県加賀市大聖寺地方町)では、夏休み企画として恒例の「九谷焼絵皿イラストコンクール展」が開かれている。小学生が今回のテーマの「昆虫」に応募したイラストの中から、入選作を作家たちが立派な絵皿に仕上げてくれる。仕上がった作品は、保護者にも大きな感動を呼んでいる。会場には原画も一緒に展示され、加筆された作品を見ると、作家たちの細やかな配慮も見られ、鑑賞する際の見どころになっている。(日下一彦)

台湾・台南市の児童の入選作8点も

同展は今回で20回を迎え、地元の加賀市内の小学生と共に、近隣の福井県、富山県の児童からも応募があり、総数2347点になった。この中から加賀市長賞、優秀賞、審査員特別賞の9作品が絵付けされ、展示されている。この他、友好都市の台湾・台南市の児童の入選作8点も並んでいる。一見すると、台湾の児童の作品の方がカラフルだ。

作品はハガキ大の画面いっぱいに力強く描いた線と九谷五彩(紺青・赤・紫・緑・黄の5色)で描くという条件下で、4月から募集が始まり、5月末に入賞者と入選者が決まった。審査委員には同館の武腰潤館長と九谷焼作家ら3人が当たった。

主な受賞作を見ると、児童らしい大胆な発想や細やかな図柄の作品が見られる。加賀市長賞に輝いた水井彩結さん(加賀市立山中小学校2年)の「みどりのきをのぼるくわがた」は緑色の木を登る姿を画面いっぱいに描いた。同美術館学芸員の神尾千絵さんによると、審査員からは「クワガタ全体を黄色で表現し、足部分をカラフルに描くなど、何よりも力強さが評価されたポイントです」とのことだ。小学2年の女児の作品とは思えない迫力がある。クワガタが大好きなのかもしれない。

一方、例年だと市長賞1点と優秀賞7点だが、「今年度はどうしてもこの1点を『特別賞』という形で入れたいとの要望が審査員からありました」(神尾さん)というのが、審査員特別賞に選ばれた呉藤素子さん(山中小学校5年)の作品。「アリの世界」とタイトルされ、地中に広がるアリの巣を描いた。

原画は淡いパステル調の作品でいかにも女児らしい筆致だが、九谷五彩で描かれると、はっきりとした色彩と線で仕上がっている。「テーマの昆虫そのものを描く児童がほとんどでしたが、この作品だけはアリの『世界』を描き、しかも、唐草模様などのデザイン性にも富み、審査員のお一人から『このイラスト作品が丸い皿にどう再構成されるのか、担当作家はどう作品に仕上げるのかを是非(ぜひ)見てみたい』との意見がありました」(同)

仕上がった作品を見て興味深いのは、画面の上下の空白部分を作家が加筆して、作品が奥行きのあるものに仕上げられている点だ。募集では長方形のハガキに描いた絵を丸い皿に描くため、作品によっては空白部分が出てくるが、絵付けされた作品の上部の余白には夏の青い空と真っ白な雲が湧き立つ様子が表現され、巣穴の下部には倉庫が追加され、「アリの世界」全体を俯瞰(ふかん)するようにイメージされている。「絵皿は児童と作家のコラボ作品です」(同)とも言われるが、この作品を見ると、それが分かる。ちなみに絵付けは嶋田壽楽さんが担当している。

会場には20回を記念して、これまでの市長賞を受賞した作品も展示されている。当初の作品と見比べると、以前は昆虫全体を描いた作品がほとんどだったが、今回はアリの頭部だけをクローズアップした作品やてんとう虫が木登りするさまを手持ちの拡大レンズで観察しているシーンを描くなど、子供たちの柔軟な想像性が如何(いかん)なく発揮された作品も目に付いた。今後、どんな斬新な作品が出てくるか期待したい。

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