進む少子化時代の大学の生き残り戦略 本業の学問分野で特色を出す

地元密着・学生定着の大学づくりを
ニーズに合わせた統廃合も必要

現役志願率
現役志願率

日本の少子化はますます進んでいる。その割に大学の数は増えており、受験生から見れば選択肢が広くなった。だが、大学受験年齢の18歳人口も減少し、定員割れに陥り、経営が成り立たなくなる大学の急増も予想される。どのようにしたら大学は生き残っていけるのだろうか。(太田和宏)

厚生労働省が6月2日に公表した人口動態調査によると、1人の女性が生涯に産む子供の推計人数を示す合計特殊出生率は過去最低の1・26になった。年間出生数は77万747人で統計開始以来初めて80万人を切った。新型コロナウイルス感染を危惧し、出産を控えたということもあるだろうが、由々しき問題となっている。

文部科学省の学校基本調査などによると、1992年に205万人だった18歳人口が2024年には106万人、約半分に減ってしまうことが予想されている。大学への志願率が60%くらいあるので何とか持ちこたえているブランド力のある大学も多い。だが地方の中小大学、短大の経営は既に疲弊しており、企業であれば、“倒産の危機”を迎えている。

大学の収入源は主に授業料と受験料、国や地方自治体からの支援金で賄われている。18歳人口の減少は大きな痛手になっている。日本私立学校振興・共済事業団の調査(20年度)によると599大学のうち222校が財務状況がマイナスになっている。特に地方の中小大学の経営が悪化しており、約43%に当たる145校が赤字。マイナス幅が20%を超えたのは53校に上っている。

歴史・文化・伝統の違う大学が新たな特色を出すための統合ケースとして挙げられるのが24年度に統合、新名称「東京科学大学」を目指している東京工業大学(益一哉学長、学生数1万人余)と東京医科歯科大学(田中雄二郎学長、学生数3000人余)だ。

2024年度の統合に向け記者会見をする東京工業大学の益一哉学長と東京医科歯科大学の田中雄二郎学長(22年10月14日)
2024年度の統合に向け記者会見をする東京工業大学の益一哉学長と東京医科歯科大学の田中雄二郎学長(22年10月14日)

両大学は既に知名度があり、国内有数の研究開発力があり、赤字大学になる可能性は小さい。なぜ統合するかというと、海外の大学と競い、新しい学問領域を生み出し、魅力ある大学を目指すためだ。統合が決まった22年10月の記者会見で両学長は「単なる統合ではなく、異なる分野を融合させ新しい社会課題を解決していく」と抱負を述べている。1+1=2ではなく3にも4にもなることを強調した。

こうした統合は名古屋大学と岐阜大学が18年に打ち出し20年度から国立大学法人東海国立大学機構として出発している。北海道では小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学が22年度に北海道国立大学機構として出発している。

医学部を持つ有名大学や地方であっても特色ある大学、大学としてのブランドがある大都市の大学が受験人口のうち、多くを集めるため、とりわけ苦戦を強いられている地方の中小大学は定員の充足率を満たすため大学の合併、外国からの留学生を多数受け入れるなど、さまざまな経営努力をしている。だが、なかなかうまくいっていないのが現状だ。

生き残り戦略としては、本業の学問分野で特色を出すことが大事だ。海外の有名大学と連携したネット授業、地方の大学同士が合併して有名な教授や講師を招き、地元との密着、地元のためになる研究・開発、学生が定着する大学を形作ることだ。国立大学、公立大学、私立大学、短大の枠、都道府県といったエリアにとらわれず激変するニーズに合わせた統廃合を行う必要がある。

大学の生き残り策は大学自体の経営努力もそうだが、受験生自体が「何がしたいか」「どういった技術・能力を身に付けたいのか」「どこの大学なら入れるか」を見定める力を付けることも必要だ。学生自身が目標を持って進学し、そのためには、幼児期から高校までの教育で親の言われるままに勉強し、進路を決定するのではなく、自己決定の習慣を身に付けることも必要だ。

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