遅々として進まぬ教員の働き方改革 「時短」よりも「生き生き」に軸足を

IT機器使用で適切な指導可能に
同僚・上司との連携も必要

1日当たりの平均勤務時間
1日当たりの平均勤務時間

文部科学省は4月28日に2022年度の教員勤務実態調査の結果(速報値)を公表した。働き方改革が叫ばれて久しいが、教員の勤務状況改善は遅々として進んでいない。教員は「子供と向き合う時間を取りたい」と思いながらも、思うに任せない。”生業”の授業、学習指導、授業の準備、生活指導のほか、部活動の顧問をせざるを得なかったりする。(太田和宏)

学校、特に小学校では、修学旅行などの学級費や給食費の集金、健康管理、クラブ活動の顧問、通学路の安全管理など、教員免許が無くてもできる仕事まで、学級担任に一極集中してしまっている。改善されてきているとはいえ「児童・生徒の様子を見て、生活面を含めた指導を行う」という。仕事の一極集中で学級担任のストレスは想像を超えるものがある。

ある講演会で同席した小学校の先生に話を聞くと、「コロナ禍、タブレット端末の導入などもあり、あれも、これもと仕事量が増えている。自分のやる仕事、学年でする仕事、今しなければならない、後でもよい、などのランク付けをして、やれること、できないことを分けて順番にこなしていくしかない」と話していた。

また、先日、教員向けネットの講演会で話していた北海道小樽市立朝里中学校で校長を務める森万喜子氏は「教職員を早く退勤させる、時短ハラスメントが横行している。教職員を早く帰らせて学校の鍵をかける“単なる時短”では教員が生き生き働ける環境にはなっていない」と語っている。

学校から早く帰っても、次の日の授業の準備、小テストの答え合わせ、児童・生徒の提出物チェックなど、自宅に仕事を持ち帰って、夜なべしたり、次の日の朝に早起きしたりして仕事をこなす”隠れ残業”というケースも多いようだ。

時短だけでなく、子供たちと共に、教員も生き生きと働ける環境づくりを目指す学校も多い。いろんなことを一度に解決する”魔法のつえ”はないと言われる。IT機器を使って職員会議の連絡事項を伝え、議論や意見交換の時間を削減、児童・生徒との連絡事項もメールで各自に伝えるなど簡略化する学校も増えている。授業の準備もIT機器を使えば、時間を短縮して作業が進む。言わずもがなであるが、校長のリーダーシップがなければ進まない。

一方で、IT機器に疎く、使い方が分からないと、これまでの仕事の仕方、会議、年間の催し物の協議などが、今まで通りでなければ気が済まない先生方もいる。懇切丁寧に伝え、「使い方が分からないなら、分からない」と上下関係なく、素直に言える、質問できる環境を整えることが必要だ。

教師が使えないIT機器を児童・生徒に使えというのは無理な話。生まれた時からネット環境の中で育った児童・生徒たちの方がかえって早く使い方を覚える。授業を通じて「分かる喜び」「理解し合えた感動」を教師や同級生と分かち合えるようなITソフトの使い方をしてほしいものだ。

以前は先生が”機関車”になってクラスを引っ張る授業システムであった。全体の中央付近、3分の2くらいがだいたい理解している状態で、一定の進度で授業を進めていかなければならず、塾で十分理解した、という児童や、理解できていない子供、やる気の出ない子供は置いていかれがちだった。

近年は個別最適な指導方針が良いと言われている。授業に用いるソフトによっては、個人個人の意見を先生が大きな画面で一括して見ることができる。児童・生徒の意見書き込みも、キーボードでアルファベット変換やひらがな変換を使ったり、鉛筆感覚で画面に直接書き込んだりする。書くことが苦手なら音声入力で言葉としてアップすることもできる。

ITを使えば、どこで間違い、どこが分からないでつまずいているのかを指摘してくれるソフトもある。先生が個々の児童・生徒の学習進度を把握して適切な指導ができるというものだ。

「いうなれば、昔の授業は先生がバスの運転手、子供は客だった。今は先生が到達点を示し、児童は個々の好きな乗り物で自分のペースでゴールに向けて授業を受けることができる」ようになってきていると、神奈川県座間市立中原小学校の田中恵子校長は講演の中で語っている。AI機器を上手に使いこなし、教諭と児童・生徒が共に生き生きした授業、学校での生活を過ごすことのできる教員の働き方改革にしていきたいものだ。

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