「ツバメ愛」で自然愛護の心を養う 半世紀以上続く小学生の生息状況調査 

住宅地図見ながら地元住民に聞き取り

“フン害”超える見守りに感動

ツバメの巣を見上げる子供たち=金沢市内で(石川県健民運動推進本部提供)

石川県では、子供たちが身近な野鳥「ツバメ」を観察することで環境への理解を深めてもらおうと、公立小学校6年生すべてが参加して、ツバメの生息状況調査を行っている。3~5人ほどの小さいグループに分かれて、自分たちの住む地域を歩いて、近所の人たちにツバメや巣を見たかと聞いたり、巣のある車庫に入れてもらったりして親鳥やひなの様子を観察した。(日下一彦)

家族で環境保護考えるきっかけに

同調査は、51年前の昭和47(1972)年から愛鳥週間(5月10~16日)の時期に合わせて、県健民運動推進本部によって実施された。子供たちに地元の自然環境や生き物に関心を持ってもらうという趣旨だ。今年も今月10日から、学校ごとに調査日を決めて始まった。こうした調査が県の全域で続けられているのは全国でも珍しいという。

金沢市の安原小学校では、子供たちが近所の人にツバメを見たか尋ねたり、住宅の車庫や軒下を見せてもらったりして探し回った。30分以上歩いて、ようやく巣にいるツバメを見つけると笑顔を見せながら、じっくりと観察していた。

同小学校は市の西南部にあり、かつては水田や畑が広がっていたが、宅地化が進み、住宅街に変わりつつある。それでも畑や水田はまだ残っている。グループに分かれた子供たちは、住宅地図を見ながら地元の人たちに聞いて回ったが、そう簡単には見つからない。

留守宅が多く、巣があってもツバメがいなかったりと、当初はかなり苦戦していた。せっかく巣を見つけても、もぬけの殻だったりして残念がっていた。

1時間余り探し歩くうちに、「今、巣作りしているよ」という農家のおじさんの嬉(うれ)しい声。納屋に入ると、梁(はり)の上に巣があり、ひな鳥の鳴き声が聞こえてきた。子供たちの表情が緩んだ。親鳥がいないタイミングを見計らって、おじさんが準備してくれた鏡を付けた長い棒を巣に近づけると、そこには4羽のひなが確認できた。親鳥が帰らないうちに、素早く観察して調査票に、見つけた場所やひな鳥の数などを書き込んでいた。

同推進本部によると、調査で確認されるツバメの数は年々減少傾向にあり、51年前は3万3000羽だったのが去年は6700羽に減っていた。その理由について、ツバメが巣を作りやすい構造の日本家屋が減ったことが影響しているという。

さらに、最近は軒先のある住宅が少なくなり、巣作りに使う泥の付着がしにくい、加工された壁が増えるなど、住宅事情の変化が影響しているとみている。これに加えて、田んぼの減少でツバメの餌になる虫が少なくなるなど、周りの環境の変化も生息数に影響しているのではないかと分析している。

子供たちは「最初はツバメがもういないかと思ったけれど、見つかって良かった。(ツバメが)1羽でも幸せに暮らせるような地域にしたい」「ツバメ以外にもほかの動物たちが自然豊かに暮らせる地域になってほしい」と話していた。

また、ツバメに“フン害”は付き物だが、フンが落ちて床が汚れるのでツバメを歓迎しないと答える人に出会い、「歓迎しなくてもいいから、生き物を大切にしてほしい」と思ったり、中には調査前はフンが嫌で巣を作ってほしくないと思っていたけれど、調査して「害虫を食べてくれるので大切だと分かった」と答える子もいた。

その半面、飛んでいるツバメはたくさん見たが、「軒下の巣は全部古巣で悲しかった」「2、3年前に巣に侵入したヘビにひなを食べられ、翌年から来なくなった」など、自然界の弱肉強食、厳しい現実に触れた児童も。また、「人が住んでいる所にしかツバメがいなかった。人が住まなくなったらツバメは来ていません」など、人間の暮らしと共存するツバメの密接な関係に気付くことができた児童もいた。

ツバメ調査は子供たちの親世代も体験しているので、親子共通の話題になり、「昔はたくさんいて調査が大変だった」と聞かされ、家族ぐるみで環境保護を考えるきっかけにもなっている。

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