高校生がG7環境相会合記念イベントで
深刻化する地方の人口減少や温暖化が進む環境問題などに対して北海道の高校生自らが知恵を出し合い、これら地元の課題解決に取り組む「探求チャレンジプロジェクト北海道」の発表会が4月15日、札幌市内で開かれた。「G7札幌気候・エネルギー・環境相会合」開催の記念イベント「環境広場ほっかいどう2023」に参加した高校生のグループはその成果を報告した。(札幌支局・湯朝肇)
「探求チャレンジ」最優秀校の静内農業高
馬との触れ合いにリフレッシュ効果
「私たちは馬との共生生活を利用した動物介護活動について研究を行いました。乗馬など馬と身近に接することは日々の不安やストレスを低減させ癒やしの感覚、安心感を持つことが可能になるという結果を得ることができました」――こう語るのは、北海道静内農業高等学校3年生の北條麻里亜さん。
4月15日、札幌市豊平区の札幌ドームで開かれた「環境広場ほっかいどう2023」には道内200以上の環境に関する企業・団体が参加した。そこには「探求チャレンジプロジェクト」で優秀な成績を収めた四つの道内高校の活動が紹介された。同プロジェクトの中で最優秀校に当たる北海道知事賞を受賞したのが静内農業高等学校だった。
同校では生産科学科の馬利用研究班23人が乗馬の際のストレス・リラックス度を科学的な見地から検証した。すなわち、①自律神経の解析②乗馬前後の内分泌系ストレスの分析③心理テストによる乗馬前後の気分評価――という観点から調査。
その結果、「乗馬することで緊張時に活発になる交感神経よりも、リラックス時に働く副交感神経活動が促進していた。さらに騎乗者の気分評価でもポジティブな項目が増えるなど乗馬にはリラックス効果を促す一方で、緊張やストレスを低減させる効果があることが分かりました。今後このテーマについてさらに深く研究し馬と地域住民との交流を通して癒やしの空間が実現できる社会をつくっていきたい」(北條さん)と語る。
同校は全国の高校で唯一の軽種馬(サラブレッド)を生産する高校としても有名で道外からの入学者が多い。毎年夏に地元の新ひだか町で行われる軽種馬競り市では同校で生産・育成した軽種馬が高値で落札されている。
札幌市長賞を受賞した北海道壮瞥高校は地元壮瞥町のリンゴ果樹園で大量に発生する剪定(せんてい)枝や老木といった廃材の有効利用に長年取り組んできた成果を発表。この日は同校地域農業科3年の大津美里さんが「本校でもリンゴ・黄桃を栽培していますが、廃材利用は課題の一つとなっていました。そこで平成29年から地域の果樹園、地元企業と連携し廃材を炭にして販売することで有効活用できないかと取り組み、現在では本校で生産販売する炭製品は地域からも高い評価を受けています」と語る。
同校では7年前に大型の焼却炉を炭窯に改良し、以来、燃料用、消臭用、オブジェ用など炭関連商品を生産・販売してきた。炭の生産量は年ごとにばらつきはあるものの年間150~250㌔に上る。「これまで6年間でおよそ1㌧の炭を作成してきました。金額的には合計20万円ほどで大きな金額ではありません。しかし、同町の果樹園面積は70ヘクタールで毎年70㌧の廃材が出ます。これをすべて炭にすると14㌧となり、約280万円になります。私たちは地域の産業を活性化させるためにも継続して取り組んでいきたい」(大津さん)と語る。
この日は、他に木製品の開発に取り組んだ旭川農業高等学校、カゼインプラスチックの有効性を検証した北海道釧路湖陵高等学校などの報告があった。
ところで「探求」チャレンジプロジェクトとは、文科省が令和4年度からスタートした新しい高校学習指導要領に則(のっと)ったもの。新しい社会の到来(Society5.0)に対し、生徒(student)自らが地域の課題を見つけ解決を目指し持続可能な社会(sustainable)の構築に取り組むことに対し、学校(school)や地域・自治体・大学が連携し「チーム(TEAM)北海道」として取り組むことをコンセプトに北海道教育委員会が令和4年度から3年間の限定事業「S―TEAM教育推進事業」の一つとして位置付け、全道228校が参加している。
この日、会場に北海道知事の鈴木直道氏も駆け付けた。人口減少が進む地方にあって今や高校生が地域の課題解決の中核となっていることは間違いない。