激化する教科書業界“闇の闘争” 子供や教師らの不信・不便を招く

文科省、大日本図書の「検定不合格」検討

タブレット学習をする女の子

出版業界の苦戦が続いている。少子化の影響で出版社の屋台骨を背負っている教科書の売り上げも、部数に陰りが見えており、当然のことながら業界の“激戦区”となっている。さまざまな軋轢(あつれき)が起き、不正が横行するのも当然といえる。

文部科学省や地方の教育委員会からの教科書に対する要求も高まっている。パソコンやタブレット端末に対応できるように、写真をクリックすれば、動画や登場人物の声を、見たり聞いたりすることができるようになっている。

文科省からはさらに、高価にならないようにと厳しい注文が付く。原価を抑え、採用される部数がある程度まとまらなければ、教科書会社は大きな赤字を抱えることになる。現場の営業担当者は必死でやっている。また、他社も同様な工夫を重ねており、“競争激化”は収まらない。

中学校の教科書発行会社である大日本図書(東京)の役員らが関与した大阪府藤井寺市の教科書汚職事件を受け、文部科学省は3月8日、大日本図書の新たな中学教科書の検定で不合格とし、発行を認めないとする意向を明らかにした。罰則が適用されれば、初めてのケースとなる。文科省が、同社の不正行為(教科書選定の公正性をゆがめた)に、重いペナルティーを科すことは当然のことである。

同社が行った不正は元役員(贈賄罪で略式起訴)と社員(同)から依頼を受けた市の教科書選定委員だった元中学校長に、教科書が採用されるよう、飲食やゴルフの接待、現金の提供を与えたというもの。加重収賄罪などで有罪判決が今年1月に下されている。

新しい教科書が発刊できないということは、これまで同出版社の教科書を使ってきた生徒・教師たちに、書き方・表現、ニュアンスが違うなど、学校現場に戸惑いを与えてしまう。また、一度教科書として採用されれば、4年間は使用することができるという安定財源を教科書会社が失うことになる。地道に営業活動をしてきた現場の社員、執筆者らにも失望を与えてしまう。波及効果は大きい。

これまでにも、営業活動が激化し、選定作業に関わる関係者を飲食の場で接待したり、金品を渡したりする不適切な営業活動が問題視され、業界挙げて自主規制してきた経緯がある。

同省の教科用図書検定規則では、不正行為があった教科・科目について、次の教科書検定では、教科書会社が申請しても内容にかかわらず不合格にすると規定されている。中学校の新しい教科書は2023年度の検定に合格すれば25年度から4年継続して使用される。

教科書を作製する執筆者、真面目に営業活動を行っている従業員、選定に当たっている関係者らの信用を失墜させてしまった。また、同社の教科書で学習してきた子供たちに不信感を抱かせ、職業への失望感を与えてしまった今回の事件はあってはならないことだ。業界の悪習を根絶しなければならない。

(太田和宏)

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