「トキ舞ういしかわ」実現へ啓蒙活動

石川県 小学校高学年向け「アクションシート」

石川動物園で分散飼育されているトキ

野生への復帰を進める国の特別天然記念物トキについて、石川県は小学校高学年向けの「トキ舞ういしかわアクションシート」を作成し、その生態や特徴、保護活動への取り組みなどを紹介し、啓蒙(けいもう)活動している。大人でも初めて触れる内容が豊富に組み込まれ、話題になっている。(日下一彦)

26年度の放鳥目指し、推進モデル地区の環境を整備

「トキ舞ういしかわアクションシート」(4枚つづり)は小学校4年生、5年生、6年生用とも、ほぼ同じ内容で作られている。まず「トキってどんなトリ?」でその生態を写真入りで簡単に紹介している。頭は赤く、立派な冠羽があることや体長が75㌢ほどで、「クチバシはセンサー」になっていて、泥の中など目で見なくても触れるだけで、エサを探り当てる、といった特徴を紹介している。

また、食べ物については、田んぼや湿地を歩き回り、長いくちばしを泥の中に突っ込み、ドジョウやカエル、タニシなどの小動物を探し出して食べる。また、草地ではバッタやコオロギなどを上手に捕まえて食べる“肉食系”で、植物は、ほとんど食べない。

石川動物園で分散飼育されているトキ

首や足が短いため、深い川や池に入って泳いでいる魚を捕るのが苦手。さらに米やトウモロコシなどの穀物は食べない中型の鳥だ。スズメやツバメのように米もついばむのかと思いきやそうでもない。大人でも初めて知る内容で、ためになる内容が盛りだくさんだ。

その他、繁殖期になると、頭部から首にかけて黒い液を体に塗り付けて灰色になる。このような方法で羽の色を変化させるのはトキだけで、巣で卵を抱く時など、繁殖期に外敵から身を守るためだという。秋には羽根が抜け替わり、国内で最も美しい「トキ色(薄いピンク色)」の羽になる。最速で時速60㌔で飛行する。

能登地域が放鳥候補地に選ばれたことを受け、県は餌場として整備するモデル地区を選定した。輪島市や七尾市、珠洲市、能登町など九つの市と町で、それぞれ1カ所ずつ選んだ。モデル地区になると、人の手による管理も必要になってくる。

水田にいる生物が稲刈り後も生息できるよう、通常なら水を抜いてしまう田んぼに水をためておく。「江」と呼ばれる溝や、ため池や水田を行き来するための「水田魚道」の整備などだ。整備費や管理費は全額県が助成することになっている。また、農薬の5割以上の削減や冬場でも水田に水を張る「冬期湛水(たんすい)」の環境整備も必要で、それらについても農家の状況に応じながら実施した。

モデル地区に決まった輪島市町野町の東地区では、市の職員が区長の元を訪れ、今後の取り組みを説明して回った。同地区は珠洲市との境の山間地で、区域の南端を2級河川の町野川が流れ、その流域にわずかに水田がある。放鳥で課題となるのはエサの確保で、田んぼから水を抜いた際にエサとなる生き物が逃げられるよう「江」の整備が必要になる。また、農薬の量も従来の半分以下にすることが検討された。

「ビオトープであったり江であったりの整備を行いつつ、地区の皆さんと協力しながら、また県とも連携を取りながら取り組みを進めていきたい」(市の担当者)また除草剤を使わずに草刈りすることが必要で、「東地区にある田んぼ10ヘクタールのうち、半分ほどで放鳥に向けた環境を整備していく予定」(同)という。県は早ければ2026年度のトキ放鳥を目指している。

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