100字の中に紡ぐ「心の教育」 「親子の架け橋一筆啓上『親子の手紙』」

「親子の架け橋一筆啓上『親子の手紙』」の表紙

小・中学生と保護者が、100字の短い手紙で互いの思いをつづる「親子の架け橋一筆啓上『親子の手紙』」が話題を呼んでいる。石川県教育委員会の「心の教育推進協議会」が続けている取り組み。今年度で四半世紀を迎えた。応募総数は2万7264点で、その中から優秀賞10組が選ばれて冊子になり、家族だけでなく、広く県民に読まれている。(日下一彦)

四半世紀迎えた石川県教委 「推進協議会」の取り組み

優秀作は小冊子に掲載

「小学校に入学して今まで、みんなより、はしるのも、はっぴょうするのもにがてで、うんどう会でもじゅぎょうさんかんでも、かなしい思いをさせてしまっているのに、いつもえがおでおうえんしてくれてありがとう。」(小学2年女子)

「にがてな事はだれにだってあるし、とくいな事も、みんなちがうんだよ。それを『こせい』っていうんだよ。一つ一つがんばるあなたの『こせい』はとてもすてきな宝ものです。えがおでいさせてくれてありがとう。」(母)

母子がお互いに「ありがとう」と対話する自然な日常が読み取れて、ほほ笑ましい。「ありがとう」の5文字はなかなか言い出せないが、この母子間には、この言葉が飛び交っているようで、気持ち良くぬくもりを感じさせてくれる。おそらく母娘に限らず、家族間でも「ありがとう」の言葉が自然と口から出ているようだ。それが友達の間にも広がっていけば、とてもすてきに思えてくる。

また、この会話からは子を否定する言葉が見当たらない。たとえ足りなくても、一生懸命取り組んでいる姿勢を評価し、褒めているので、こうした子供には思いやりのある心が育っていくように感じられる。それがこの運動の趣旨の「心の教育」なのだろう。

「心の教育推進協議会」は、県教委が子供の心の教育を県民挙げて進めるために平成10年に設けた「豊かな心を育む教育推進県民会議」の活動として始まった。いじめや不登校、青少年犯罪の凶悪化に一石を投じたいとの願いが背景にあり、現在は「心の教育推進協議会」の事業として、学校と連携しながら幅広い参加を得ている。

「親子の手紙」は平成10年に始まり、今年で26回を数える。応募は昨年同様、2万7200点を超えている。親子の思いを100字以内の「短い手紙」につづり、家族の話し合いを大切にする機運を高めてほしいとスタートした。

夏休みの課題として、あるいは道徳教育の一環として、地域によってはPTAと連携して実施されている。応募資格は県下の小・中学校の児童・生徒とその保護者や家族で、所定の1枚の応募用紙には100字のマスが2カ所あり、その中に親子それぞれが思いをつづる。作品は専門委員らが審査し、入賞作品120点(優秀賞10点、優良賞50点、佳作60点)を決める。優秀、優良賞60点は、90㌻余りの作品集に掲載される。冊子は応募者全員と県内の小学校4年生全員に配付されている。

優秀賞をもう一点紹介しよう。

「娘よ、どうか勉強の途中で寝落ちしないで!母より大きくなったあなたをどうやって運べばいい?そーっと手を握ると、柔らかだった手がゴツゴツのマメだらけ。…部活頑張っとるんやね。もう少し寝かせといてあげるか。」(母)

「母よ、どうかそのガサガサの手で起こさないで!起こしてもらうのは嬉しいけど、痛いんだよね。でも、お母さんが家事を毎日一生懸命こなしている証だと由夏は思っとるよ。縁の下の力持ちのお母さんが、家事を毎日一生懸命こなしている証だと由夏は思っとるよ。縁の下の力持ちのお母さんが大好きです。」(中2女子)

思春期を迎えた女子生徒には、ガサガサした母の手は抵抗を感じるだろうが、それを超える母への思いやりが感じられてほほ笑ましい。文脈を通して読み手にゆったりとした心の広さが伝わってくる。おそらく彼女も、母親と同年齢になった時、かつての母の手を懐かしく思い出すに違いない。

同事務局は「学校ぐるみで積極的に応募するところが増えました。小冊子も多くの県民に手に取ってもらえるようになり、この運動が徐々に浸透してきたようです」と手応えを感じている。事務局に届いた保護者の感想を見ると、「共感できる親子が何組かあり、子供への接し方の参考になります」「家族のコミュニケーションの大切さを改めて教えられました。こんなふうに考えてあげられたら家族が温かくなれるでしょう」「読んでいると心が温かくなり、大人でもグッときて泣けました。毎年楽しみにしています」などの声が寄せられている。

問い合わせ=電話076(225)1839。

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