学校給食の変遷・在り方を考える 札幌市学校給食栄養士会が展示会

学校給食展には多くの市民が立ち寄った=10月29日、札幌市内

「食」を大切にし、健やかで豊かな食生活を送ることで子供の育成を目指す学校給食の展示会がこのほど、札幌市内の地下歩行空間で開かれた。同市内の小中学校、特別支援学校などの学校給食に関わる栄養教諭や栄養士で組織される札幌市学校給食栄養士会が主催する展示会には多くの市民が足を止めて見入っていた。(札幌支局・湯朝肇)

歴代の食器に見る時代の流れ

食育や郷土愛育む重要な教育

「札幌市内の学校(小中学校や特別支援学校)で出されている給食で使われるお米や小麦粉は、北海道産のものを使用しています」――こう語るのは、札幌市学校給食栄養士会の千葉直美会長。10月29日、札幌駅と大通公園をつなぐ地下歩行空間イベントスペースを利用して同会主催の「学校給食展」が開かれた。そこでは、これまでの札幌市内での学校給食の様子や歴史、あるいは各区の取り組みなどがパネルなどを通して紹介された。

札幌市内には市立の小中学校が300校、特別支援学校が5校ある。学校給食に関しては、市内10区の地域的な特徴を生かしながら各学校が児童に給食を提供。その取り組みが同展で並ぶ。例えば、東区はタマネギの発祥の地として明治時代からタマネギの生産が盛んな土地柄。

そこで同区の小中学校では10月に「札幌黄(タマネギ)を食べよう週間」を設け、タマネギの歴史やタマネギの効用などを説明するなどタマネギを通して郷土愛や地産地消の大切さを教えている。また、江別市に隣接する厚別区ではJR北海道と連携。地元産のニラの他、江別産のジャガイモやホウレンソウなど道内野菜を取り入れた給食作りをアピールするといった具合だ。

さらに、この日の展示会には実際に献立された給食が並ぶ。そこには美唄市で有名な鶏肉を使った、とりめしや大樹町で取れたシシャモの南蛮漬け、さらに道産キノコを使ったキノコ汁、そして道産牛乳と豪華なメニューとなっている。この他に別のコーナーではこれまで札幌市内の給食に使われた食器を年代別に展示。昭和30年のアルマイトのカップ、昭和45年のポリプロピレンの食器、そして昭和52年の仕切りの付いたステンレス製の皿などの移り変わりで時代の流れを見るのも面白い。

ところで、給食は単なる食事を取るだけの時間ではなく、食育という重要な教育の一環ともなっている。

例えば、文科省が調べた令和元年の調査によると、「朝食を欠食する児童の割合」は小学校6年生では4・6%、中学校3年生8%という数字が出ている。ここでいう朝食を欠食するというのは、「朝食を全くとらない」か「朝食をあまりとらない」と答えた子供たちである。一方、札幌市学校給食栄養士会が昨年に調査した札幌市内の状況を見ると、小学校5年生では4・6%、中学校2年生では8・7%とおよそ全国と同水準であることが分かる。それでも朝食については「朝ご飯は体を目覚めさせるためのスイッチの役割を持つ大切な食事。主食、主菜、副菜でバランスの取れた食事は子供たちの健やかな成長に役立ちます。われわれとしても引き続き食指導や教職を通じて欠食目標値0%に近づけたい」(同会事務局)と語る。

ただ、若者世代では朝食を欠食する割合が25%と高く農水省が目標とする15%以下には程遠い。さらに近年は、「おひとりさま」の言葉があるように一人で食事を取る「孤食」が増えているのも事実。食形態の変化が社会に及ぼす影響は大きい。

札幌市学校給食栄養士会の発足は昭和26年で歴史が古く、札幌市はいち早く給食を取り入れた。今回の学校給食展も43回を数える。「ここ2年間は新型コロナウイルスで給食展を行うことができませんでした。3年ぶりの開催ですが、われわれの取り組みを多くの市民に知っていただきたい」(千葉会長)と語る。同会としては学校給食を通して健康の保持増進、望ましい食生活を養う、伝統的な食文化の理解を深めるといった事柄の他にも食べ残しなどを再利用するフードリサイクルにも力を注いでいる。

もっとも、人口減少が目立たない札幌市などは、学校給食はまだ順調に推移しているが、地方などでは学校統合や学級減少で学校内給食を作ることができないケースが増えている。すなわち、「老人ホームや病院などで食事を作る民間業者に委託し、それを給食とせざるを得なくなる」というのが現場の実情だ。そうした中で給食を通し食育や郷土愛を育成できるのか、学校給食の在り方も変化しつつある。

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