~変わりゆく学校での飼育活動~
ホスティング方式での学校動物飼育
長期休暇時の獣医師への負担大きい
大手前大学現代社会学部教授の中島由佳氏
メインテーマを「学校飼育動物への関心を高め理解を深めるために~変わりゆく学校での飼育活動~」と題して全国学校飼育動物研究大会(鳩貝太郎会長)がZoomによるオンライン形式で開催された。中島由佳・大手前大学現代社会学部教授がホスティング方式での学校動物飼育を踏まえ研究成果を講演した。
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ホスティング方式というのは、2020年度の科学研究費(文部科学省から)における研究の成果「持続可能な学校動物飼育プログラムの開発と評価、ホスティング方式の構築と効果検証」に記したもの。概要を説明すると、小学校でモルモットを飼い、長期休業中は獣医師に預ける。地方自治体の教育委員会が絡むこともあるが、それによって小学校教職員の負担を和らげることができるというもの。研究者は飼育の効果の測定、飼育の在り方の検証などを行う。
具体的には、まず、科学研究費で獣医師を通して幼獣を購入する。そして、獣医師による慣らし飼育を行う。その後、1学期の学校飼育が始まり、校医の獣医師が。検診したり育てるための研修を担ってもらう。3連休以上の休業時や夏休み、冬休みの長期休業時に獣医師に預ける。学校飼育をしている間、獣医師に預けている間に研究者が調査ヒアリングなどを行い、餌代など飼育にかかる費用を捻出、研究成果を文部科学省に報告する。2学期末までの飼育を学校で行う。春休みの長期休暇時に獣医師に預け、新学期を迎え、次の学年に譲り渡す。
こうした仕組みを構築するきっかけは、学校で飼育の中心になっている先生たちの声だった。鳩貝太郎会長が04年に調査結果を報告した結果と17~18年に中島教授が調査した結果は以下の通り。長期休暇の飼育が教職員の仕事になっている比率が高くなっている。長期休暇時の世話は教職員に任せられている。鳥インフルエンザ以前は児童が当番で世話をしているが82%だった。中島氏の調査でも教職員が当番で世話するのが57%だった。また、鳥インフルエンザ以前にはなかったものが、感染症・アレルギーへの懸念が高まり、現在ではコロナウイルス感染の問題が懸念として高まっている。
明治の動物飼育開始時期より、長期休業時の世話が問題になってきた。近年の業務の煩雑化・増加に加え、安心安全への気配り、飼育での密状態による感染を避ける対応、アレルギー等への配慮、コロナ禍による業務・ストレス増加、動物飼育は素晴らしいことだが、感染につながる経緯が心配という声も多く聞かれる。動物と触れ合った経験があまりない、ほとんどないという若い教員の増加などが挙げられる。学校へのヒアリングを通して分かってきた。
学校の休業中に動物を預かってくれるシステム(ホスティング)があれば、予算の問題、移動のシステムなど課題はあるが、利用してみたいという声も多く聞かれた。ホスティングのメリットとして、クラスの全員が動物飼育、触れ合いを経験できる、絵日記などの動物描写によって、命の不思議さ・温かさ、動物の成長を実感する変化を表現できるようになる。ひげが伸びてきたことなどを描写。細かな描写動物飼育の大変さを知り、工夫を身に付ける、長期休業中に教職員の負担軽減になる、動物愛護に精神育成にもなる。
ホスティング飼育の問題点として、3連休や長期休業中の負担が大きい、労働時間の問題よりも、預かっているという心理的負担も含めて、獣医師の負担が大きくなった。動物愛護センターの利用もハードルが高い。文科省からの科学研究費で賄っているところが大きいが、獣医師への謝礼、餌代はどこから捻出するか、試みができる学校数に限りがある。コロナ禍を受け、学校動物飼育にためらいがある、経験のある教職員が減少、飼育動物の病気が重くて、ホスティングまで手が回らない、などの理由で飼育をやめてしまったところもある。
学校動物飼育をどうつないでいくか。近年は動物を飼う・目にするのが非日常の時代になっている。さらに動物が売り物として存在する時代になっている。学校動物の生命の重み、病老死への戸惑いとか、~してあげればよかったという後悔が、今まで以上に飼育する側に重く感じられる時代になってきている。さらに教員の働き方改革によって、正規職員の不足の問題、課外活動の外部委託などと絡んで学校動物飼育をどうしていくか、真剣に考える時期に来ている。動物飼育に関する情報・サポートが限られ、それらが途絶えたような学校でどのように「動物との触れ合い飼育を経験」してもらうかが、今後の課題となっている。