屋外で体を動かし協働の精神培う
特別支援学校の児童生徒を対象とした全国フットサル大会が今年11月に札幌で開催される。一般財団法人日本ライオンズが主催する同大会は東北・東関東など全国9地域10地区で優勝した10の学校チームが参加して競う大会。今年、第1回の開催だが、その趣旨や目的などを取材した。(札幌支局・湯朝 肇)
一般財団法人日本ライオンズが主催
地区大会優勝の10チーム参戦
次世代を担う子供の健全育成事業の一環
「フットサルは大規模な競技場や天候に左右されることなく、ボール一つで少ない人数で楽しむことができる。特別支援学校においても児童生徒の障害の状況において弾力的に工夫すれば活発な運動をすることができる集団的なスポーツ」
こう語るのは、公益財団法人小野寺パラスポーツ振興会の鈴木重男事務局長。北海道立特殊教育センター所長や北海道札幌養護学校校長など長年にわたって障害者教育に取り組んできた鈴木氏は、フットサルの効果について次のように語る。
「障害者はどちらかといえば、家にこもりがちになりますが、スポーツを行うことで外に出て体を動かし体力を向上させることができます。特にフットサルは前述したように小人数での競技が可能。全国大会を目指すとなれば目標も定まり、日々の鍛錬も必要で練習に余念がありません。また、チーム競技ですからチームのメンバーと連携を取りながら相手の動きに対応していくわけです。そこではチームワークといった協働の精神、他校への生徒に敬意をもって接する他者への尊重、さらには公正さや克己心といった自律心を培うことができますので教育的効果は非常に大きい」と説明する。
令和2年に設立された一般財団法人日本ライオンズ(不老安正理事長)は、こうしたフットサルの特質を生かして全国特別支援学校フットサル大会の開催を企画した。昨年第1回を行う予定だったが、新型コロナウイルスによる感染拡大で中止を余儀なくされた。今年は7月から9月末までの間に全国10地区で競い、それぞれの優勝チームが11月5日、札幌市内の北ガスアリーナ46において全国大会を実施する。
同大会の趣旨について不老理事長は、「当財団の目的は、我が国の子供が『夢』『希望』を失うことなく高い志を持ち続け、次代を担う者として思いやりの心をもって自立していくことができるよう全国のライオンズクラブが結集し、子供の健全育成に資する事業を行うこと。特別支援学校フットサル大会はその事業の一つ」と語る。日本ライオンズの他の事業としては、児童養護施設に処遇された小学生への学習支援事業、小中学校の薬物乱用防止に講師を派遣する事業を行っている。
ちなみに全国大会に参加する各地域の優勝校10学校の旅費などについては日本ライオンズが全額助成し、移動および宿泊の手続きなども一括対応していく。
一方、北海道の場合を見ると、全国大会の道地区大会は小野寺パラスポーツ振興会が担当。7月29日に江別市内の野幌運動公園体育館で行う。これまで北海道では同振興会が平成29年から毎年、全道規模の小野寺眞悟杯特別支援学校フットサル大会を実施(昨年と一昨年は新型コロナで中止)してきたが、今年の大会は、全国特別支援学校フットサル大会の地区大会を兼ねることになる。
新型コロナが始まる前は30校ほどの参加があったが、今回は13校で競う。また、日本フットサルリーグ(Fリーグ)に加盟する北海道のクラブ「エスポラーダ北海道」が審判業務や会場設定などを務める。
特別支援学校で学んでいる児童生徒は、知的障害、発達障害、聴覚障害、視覚障害の弱視、肢体不自由の独歩が可能な生徒など障害の状態が多岐にわたる。これまで小中学校や高等学校では各種の全国的スポーツ大会が開催されてきたが、特別支援学校ではそのような大会はいまだなかった。そういう意味で今回の全国フットサル大会は歴史的にも極めて意義のある大会といえる。