札幌市で北海道こころの平和フォーラム
ロシア軍によるウクライナへの武力侵攻や、イスラエルとハマスの軍事衝突など現在、世界中に憂慮の念を抱かせている紛争の背景には、少なからず宗教が影響を与えている。こうした中で、それぞれの宗教を理解し、宗教者間の対話促進を進めようと「北海道こころの平和フォーラム」では定期的に宗教関係者を招きフォーラムを開催している。(札幌支局・湯朝肇)
宗教関係者参加し多彩なテーマ
道展会員の山崎亮氏が講演
「ルネッサンスとは、文芸復興と訳されています。それは中世から近世にかけての大きな転換点で、文学、思想、芸術文化に大きな影響を与えました。特に絵画や彫刻の世界にも大きな変化をもたらしました」――こう語るのは北海道美術協会(道展)会員の山崎亮氏だ。4月13日、札幌市内で開かれた北海道こころの平和フォーラム主催の講演会で山崎氏は「西洋美術史におけるルネッサンス~人間性復興とキリスト教の変遷の中で」をテーマに1時間ほど語った。
山崎氏はまず、ルネッサンスの代表的な美術家としてレオナルド・ダビンチ、ミケランジェロ、ラファエロの名を挙げて、それぞれの作家の作品を紹介。さらにローマ帝国時代の絵画、カトリックの影響の強かった中世の絵画、ルネッサンス期に活躍した画家たちの絵画を並べながら、その手法や時代背景について説明した。
「古代ローマの時代の絵画はそう多くはありませんが、ポンペイの遺跡などから発掘された絵画を見ますと、リアリティーに富んでおり、古代ギリシャの影響を強く受けていたことが分かります。ところが、中世に入ると絵画は平面的になり、奥行きがありません。分かりやすく言えばロシア正教会のイコンの聖画像のようなものとなります」と語る。
一方、ルネッサンス期の絵画については「作家たちは古代ギリシャ・ローマに目を向け、それまでタブーとされた裸体なども描き、遠近法を取り入れた写実的で曲線美を生かした立体的な画法で描かれています」と説明する。こうしたルネッサンスを生み出した要因としては、①十字軍の失敗によるローマ・カトリック教会の権威の失墜②メディッチ家のような富裕な商人が美術家のパトロンとして、文化芸術を育てていった③人間性を抑圧してきた中世の束縛からの解放を求める機運が高まった――ことを挙げる。
この日のフォーラムには20人ほどが参加、会場からは「何故、ミケランジェロやレオナルド・ダビンチ、ラファエロらがルネッサンス期の代表的な美術家となるのか」といった質問や、「ルネッサンスは『中世の否定』という形で紹介されることが多いが、ミケランジェロなどはとても熱心なクリスチャンであったと思う。ルネッサンスが即、神への否定にはつながっていない」といった意見も出された。
こころの平和フォーラムは、平成22(2010)年9月からスタートし、今回で42回を数える。フォーラムの内容は、単に宗教・宗派の教えにとどまらず、地元・地域の伝統芸能や縄文時代の精神構造など多岐にわたる。また、宗教者や学者を招いてのフォーラム以外に、寺院や神社を訪問し交流するといった活動も行っている。ちなみに、昨年5月には札幌市内の曹洞宗の峯光寺を訪問し、ヨガと座禅、写経を体験した。
今後の展開については「現代は地域の絆が薄れ、地域力が低下しているといわれます。また、近年は倫理道徳の規範が薄れ、重大な犯罪の多発化が指摘されています。そうした時代において宗教者の役割は非常に大きいものがあると思います。これからは地方においても宗教者同士が手を取り合って盛り上げていく時なのではないでしょうか」(事務局)と語っている。