宮城県図書館で文庫展、ウェブで約30万点公開
東日本大震災から13年が経過し、復興の基盤となる交通機関の復旧・整備は大部分が完了した。宮城県内を中心に、主な交通機関の被災状況と復興の現状に焦点を当てた展示が宮城県図書館(仙台市泉区)で開かれている(5月26日まで)。同館は「災害はいつ、どこで起きるか分からない。膨大な資料を活用して、災害の風化を防ぎ、防災や減災に活(い)かしてほしい。そして復興した場所を訪ねてほしい」と展示の意図を語っている。(伊藤志郎)
交通機関の復旧ほぼ完了
「復興後の被災地訪問を」
同館では震災の翌年から関連資料の収集を始め、今年3月末時点で約1万3千件を保管。そのうち県内自治体提供の写真・動画や資料約30万点はアーカイブとして誰でも閲覧できる。
展示は、東日本大震災文庫展の14回目でタイトルは「震災と交通機関―未来へつなぐ復興の礎」。同館2階展示室に約30点の図書資料を解説文を添えて陳列している。
道路・橋梁(きょうりょう)、公共交通機関、港湾、空港などのコーナーに分類。道路分野では、震災時は八つの橋が落ち県管理道路110路線の275カ所で通行規制を余儀なくされたが、今では三陸沿岸道路などほぼすべて復興していることが分かる。また仙台市と石巻市を結ぶ仙石線は2015年5月に、石巻線も同年3月に全線開通した。他のコーナーも資料の見開き写真や時刻表、地図、年表で紹介している。
同文庫整備班の担当者は「復興の基盤となる交通機関の復旧・整備は大部分が完了している。復興した交通機関を利用して各地を訪れ、震災の記憶をたどり、教訓を未来につなげていただければ幸いです」と語る。
同じ階の廊下では「写真パネル展」を同時開催。震災時と復興後の駅舎や橋の写真を並べていて、復興の様子が一目瞭然で分かりやすい。気仙沼湾横断橋と大島大橋の美しい姿が印象的だ。
ところで同館では震災が発生した11年の翌年7月から「東日本大震災文庫」を設置し、被害状況、救援活動、被災者支援、復旧復興状況に関する資料を広く収集・公開してきた。所蔵するのは図書約7千冊、逐次刊行物約2千冊に加え視聴覚資料約200点、新聞27種だが、特筆すべきはチラシやパンフレット、ポスターが5千点近くを占めること。町内住民向けの配布チラシや、団地でけんちん汁を作る手書きのイベント案内、中には東京都大田区のボランティア募集のチラシも含まれる。
資料の一部は同館3階の四つの開架に陳列され、閲覧が可能だ。その内容は、市販の書籍・月刊誌はもちろん、『仮設きずな新聞』やボランティアの活動記録、宮城県と県内全市町村の報告書などあらゆる方面に及ぶ。中学校の避難所管理日誌、心のケアセンター通信、国や医療機関、自衛隊の活動記録もあった。
内容的に書籍の背表紙を列挙すると、記録集、ラジオの役割、メディア、防災、リスク・危機管理、学校、原発事故、ペットを救え、語り継ぐ、絵本と多岐にわたる。
そして県内自治体からの提供資料のうち約30万点をアーカイブとして公開しており、誰でもインターネットでアクセス可能だ。同館ホームページのトップ画面内「東日本大震災アーカイブ宮城」をクリックすると閲覧できる。一例として、災害対策本部の連絡ボードの写真や小学校から撮影した動画映像、また被災状況や放射線量測定結果もあった。
同館では今も県内外の個人を含めての資料提供を呼び掛けている。問い合わせは、ホームページまたは(電)022(377)8498。