“SNS被害”から子供を守れ

精神的悪影響懸念し米英で規制の動き

1月31日、米上院司法委員会の公聴会で傍聴席の被害者遺族らに謝罪するメタのマーク・ザッカーバーグCEO(手前左)(UPI)

近年、子供がSNSを通じて犯罪に巻き込まれたり、心の健康を損なったりする問題が深刻化し、各国が対策に乗り出している。米国では議会がSNSの運営会社に子供を保護する措置を講じるよう求め、英国では13歳未満にSNSアカウントを持たせないことを事業者に義務付ける法律が成立した。日本でも子供のSNS利用は急増しており、昨年はSNSに起因する小学生の犯罪被害が過去最多となった。子供の心身を守るための取り組みが急務だ。(亀井玲那)

年々増加する日本の利用者

啓蒙活動にとどまる安全対策

米議会は今年1月、メタやX(旧ツイッター)、ティックトックなどSNS大手5社の幹部を呼んで公聴会を開き、与野党の議員が企業の責任を厳しく追及した。傍聴席にはSNSによる性被害を苦に自殺した子供の遺族らが訪れ、フェイスブックやインスタグラムを運営するメタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が謝罪する場面もあった。

英国では2017年に当時14歳の少女がSNSの影響を受け自ら命を絶った事件をきっかけに、昨年9月、子供をインターネット上の有害な情報から守る「オンライン安全法」が成立した。同法はSNSを運営する事業者に対して、18歳未満の子供に自殺や自傷行為、摂食障害などを助長する投稿が見られないよう規制し、13歳未満にはSNSのアカウントを持たせないことなどを義務付けた。

SNSが精神面へ与える影響について、米国の公衆衛生政策を統括するマーシー医務総監は昨年5月、SNSと子供のメンタルヘルスに関する報告書を公開。「SNSの利用が子供や若者の心の健康に深刻な悪影響を及ぼす恐れがある」と警告した。さらに、1日に3時間以上SNSを使う若者はうつ病のリスクが倍増すると指摘した。

多くのSNSでは、ユーザーの属性や閲覧履歴を分析してお薦めの投稿を自動表示する仕組みが採用されている。画面をスクロールすれば永遠に新しいコンテンツが表示され続けるのも特徴の一つだ。これらによって各ユーザーのSNS滞在時間を最大化し、広告収入で利益を得るのが一般的なビジネスモデルである。

「お薦め」機能には検索機能を使わず自分の好みに合う情報を得られる利点もあるが、1度自殺や自傷行為に関する投稿を閲覧した子供のアカウントに同様の投稿が次々表示されるといった事例も報告されている。英国で自殺した14歳の少女のSNSアカウントにも、大量の自傷画像が表示されていたという。

日本でSNSを利用する若者の割合は年々増加している。総務省の通信利用動向調査によると、21年には13~19歳でSNS利用者の割合が9割を超え、22年には6~12歳でも初めて4割を超えた。犯罪に巻き込まれるケースも増えており、警察庁によると昨年1年間にSNSに起因する犯罪被害に遭った18歳未満の子供は1665人。そのうち小学生は前年比25人増の139人で過去最多だった。被害の多くは児童ポルノや不同意性交などの性犯罪だ。

総務省情報通信政策研究所の調査によると、日本の10~20代の若者の間ではインスタグラムとXが特に多く利用されている。このうちXについて、東京都健康長寿医療センターが都民約2万人を対象に行った調査では、日常的に利用している人は悩み・抑うつ傾向が強くなるとの結果が出ており、子供が利用した際の精神面への影響が懸念される。

子供の犯罪被害が増え、精神衛生上の悪影響が懸念される中、日本の安全対策は啓蒙(けいもう)活動にとどまっているのが現状だ。むしろ、SNSを子供の相談を受け付けるためのツールとして「活用」するものと位置付ける傾向が強い。もう一歩踏み込んだ対策が必要だ。

一方で、SNSを心のよりどころにする子供がいるのも事実だ。身近に信頼できる人や環境がなく、SNSを通じて構築した関係が支えになることもある。LINEなどのメッセージ機能を主とするSNSは全ての世代で9割近くが利用しており、連絡手段としてライフラインの一つになりつつある。

子供のSNS利用を一律に規制するのではなく、子供がより安全にSNSを利用できる環境をつくることに重点を置いた対策を講じる必要がある。事業者に対策を求めることについては、通信の自由や表現の自由への抵触を懸念する声もあり、慎重な議論が必要だ。また、保護者がSNSのメリットとデメリットを把握し、トラブルが発生した時、それを理解し共有できる関係を築くことも重要である。

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