音楽の力で不登校児を支援

沖縄県在住音楽家らがトークイベント

講演する楽友協会おきなわの平良明子氏=1月17日、沖縄県浦添市のアイム・ユニバースてだこホール市民交流室

沖縄県在住の音楽家らで構成され、不登校支援などの活動をする一般社団法人「楽友協会おきなわ」は、活動報告を兼ねたトークイベント「音楽家が子どもとできること~音楽の力で織りなす支援の場、その軌跡と可能性~」を浦添市内で開催した。講演はオンラインでも配信された。貧困や不登校などの問題を抱える子供たちに、音楽がもたらす支援の可能性などについて話し合われた。(沖縄支局・川瀬裕也)

子供たちに「居場所」つくる

「芸術の幅広がる」と音楽家

楽友協会おきなわは2013年から、「クラシック音楽の普及と、社会と音楽家をつなげる」をテーマに県立病院内のロビーコンサートや、沖縄盲学校・特別支援学校の中学生を対象としたコンサートなどを実施してきた。これらの活動が評価され、18年から文化庁が推進する「障害者等による文化芸術活動推進事業」の一環として、音楽を通して不登校の子供たちを支援する活動を開始した。

冒頭、同協会で子供支援プロジェクトを担当する平良明子氏が「不登校の子どもたちのための音楽ワークショップ」と題して活動報告を行った。特定非営利活動法人・沖縄青少年自立援助センター「ちゅらゆい」と連携し、那覇市とうるま市にある不登校の子供たちが集まる4事業所において、①創作や即興楽器演奏などの音楽ワークショップ②交流や関係性づくりのための合宿③アウトプットとしての発表会の実施――の三つの活動を柱に支援を行ったと紹介。

平良氏は、ある事業所で子供たちが自由に書いた歌詞に、同協会の音楽家がメロディーをつけテーマソングを創作した活動を振り返り、子供たちから「楽しかった」「安心した」との感想があったとして、音楽の力で、子供たちの「居場所」に一体感と安心感が生まれたと語った。

また、自然豊かな環境で行う合宿では、不登校の子供たちにとって最も重要となる「(人との)関係性を取り戻すための交流」をメインに、レクリエーションなども織り交ぜながら、時には楽器を使わず一緒にスポーツをしながら交流することもあったという。

これらのワークショップの集大成として毎年2月に行われる演奏発表会「ゆかいな音楽家と、ときどきひきこもり」は、子供たちの主体性と創造性が発揮されるイベントで、平良氏は、「音楽家と子供たちが一緒に準備し、楽しむことで良き成功体験となっている」と評価した。

次に、学校や子ども食堂などに音楽家を派遣する事業を手掛ける、大阪府堺市文化振興財団の常盤成紀氏が、「居場所としての子ども食堂と音楽ワークショップ~大阪府堺市の事例」と題して講演した。

堺市では昨年末時点で100団体の「子ども食堂」が運営されており、常盤氏はその中の3カ所でモデル事業としてアーティストの派遣を行った。事業を進めるに当たって常盤氏は、音楽を通した次元の高い交流のみを目的とするのではなく、ワークショップを行うことによって、子ども食堂が持つ地域の「居場所」としての機能をより高めていくことを目指したと語った。

常盤氏は、子ども食堂は貧困対策として「(貧困で)食べられない子供たち」のみが来る場所として運営するのではなく、どんな子でも来ることのできる交流拠点となるべきだとし、子供たちがお年寄りや大人と触れ合うツールとして、楽器や音楽が大きな役割を果たすと分析。

活動する際には、「何かの訓練を積んでできるようになるという学校のような経験よりも、自分のできることを見つけて、それを広げていくことができるようなコミュニケーションを心掛けた」という。

そのような中で、音楽家たちと、「音楽を通して他者と関わり合うような機会をつくっていこう」とワークショップを続けてきたといい、参加した音楽家からは、自身の芸術の幅の広がりを感じたとの意見や、演奏会で客席の人と目を合わせられるようになったとの反応があったとし、「子供たちだけでなく、双方にとって良い効果があった」と、同プロジェクトの意義を強調。「子供たちの居場所は、『作ってあげる』ものではなく、『一緒につくる』ものだと再確認した」とまとめた。

その後のトークセッションでは、子供たちの感想をまとめたアンケート結果を基に、今後の活動の在り方を模索したり、コンサートホールや学校ではなく「居場所」で音楽交流を行うことの意義についても確認し合われた。

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