
子育て支援の一環として、学校給食費を無償化する自治体が増えている。東京都杉並区は「保護者の負担軽減になる」と、10月から区立の小中学校で実施する。既に足立区など八つの区が今年度から実施するなど、広がりを見せている。
文科省が今年1月公表した「学校給食実施状況等調査」によると、公立小学校は月平均4471円、中学校は5121円。小学校6年間で約32万円超、中学校3年間で約18万円超の保護者負担となる。
ただ、給食費が支払えない低所得世帯は既に無償化されている。むしろ、所得制限なしに一律に無償化するのは、子育て家庭の経済格差を広げることになる。それに、公立だけを無償化すると、私立との不公平感が生まれてしまう。
家計の負担が減るのは確かだが、その分、自治体の財政負担は大きくなる。期間限定的な支援になる可能性が高い。
忙しい共働き家庭では、給食で子供の栄養バランスを補っているという家庭が少なくない。給食がない夏休みは子供はカップ麺やスナック菓子で済ませているとも聞く。親にとって毎月の給食費を負担する以上に給食で栄養バランスの良い食事が摂(と)れるのはとてもありがたい。給食費を負担に思う家庭がそんなにあるとも思えないのである。
懸念するのは、給食費がタダになったら、果たして親たちは給食があることに今まで以上に感謝の思いを持つだろうか。子供も給食で提供される食物を無駄にせず、感謝して食べるだろうか。そんな心配が頭をよぎる。
家庭で担うべきことを次々と社会が肩代わりすれば、親が育ち子供が育つわけではない。むしろ親の負担軽減を目的とする子育て支援をすればするほど、家庭教育は空洞化し、成り立たなくなる。
そのうち家庭教育という言葉が死語になるのではないか。孫育ての歳(とし)になって、そんな子供の心配が尽きない。
(光)