産業発展へデータ分析の活用を 有限会社ゑびや代表の小田島春樹氏講演

座談会の参加者(左から)山田健太氏、富山香鈴氏、小田島春樹氏、岡崎威生氏=3月3日、配信動画より

沖縄県の琉球大学はこのほど、「数理・データサイエンス・AI教育普及展開シンポジウム」をインターネット配信で開催した。廃業寸前からデータ分析を通じてV字回復した三重県伊勢市にある有限会社ゑびや代表の小田島春樹氏が、事業におけるデータ活用やデジタル化を通して新たな産業の発展に取り組んでいる事例を紹介しながら、これからの産業発展について講演した。(川瀬裕也)

琉球大学、ネット配信でシンポ開催

コロナ禍でも店舗の売り上げアップ

文部科学省は、学生の数理・データサイエンス・AI(人工知能)への関心や、適切に理解し活用する基礎的な能力を高めるため、体系的な取り組みや教育を行う大学や各種高等専門学校などを支援する認定制度を実施している。

同制度の特定分野校であり、ダイバーシティー推進校である琉球大学は2020年、「データサイエンティスト養成履修カリキュラム」を開設。企業や行政などの実データを教育に活用し、企業に還元する「産学官金連携」(企業、大学、官公庁、金融機関)をテーマに教育を進めている。

シンポジウムでは、「世界で一番データを活用した食堂」として知られる、有限会社ゑびや・株式会社EBILAB代表の小田島氏が「老舗企業は変革し続ける伊勢から変革する理由~データを活用したコロナ禍での私たちの取り組み~」と題し基調講演した。

小田島氏は、廃業予定だったという自身の飲食業の店舗を再建する際、データ分析を活用。「もしかしたらこの仕組み自体がビジネスになるのでは」と考え、これらのノウハウを提供することで、新たな事業拡大に成功した。AIやデータサイエンスを活用することで、「全く今まで世の中になかった仕事を生み出すことができた」と、データ分野に取り組む重要性を語った。

小田島氏は具体例として、店舗前の歩行者通行量をカメラによる画像解析で計測し、その人流データと来客数、イベントや広告の有無による売り上げ推移などの相関関係を分析する方法を紹介。「日本の多くの企業はアクション(イベントや広告など)を行っても、それがどれくらい効果的だったかを数値化していない」と指摘する。

行動と結果を可能な限り数値化することで、例えば「クーポン券を渡す場合も、いつ渡すか(入店時、会計時など)や、どのような言葉を掛けるかによって、クーポン券のその後の使用率が大きく異なっていた」ことに気付いたという。

そのため、コロナ禍においても、来客者の男女比率や年齢層を数値化することで、前年比で人流は減ったにもかかわらず、店舗の売り上げをアップさせることができたと成果をアピール。「データは過去の帰結であり、事実。使い方によってはものすごくビジネスや商売に生きてくる」と強調、「データ活用の知識を産業発展にも生かしてほしい」と締めくくった。

第2部では、「これからの社会に必要なデータサイエンス人材とは」と題して座談会が行われた。

同大工学部の岡崎威生教授は、データサイエンスを社会に生かしていくためには、「いろいろな情報を全部見なければならない。いろいろなこと全てに目を向けアンテナを張ることが大切だ」とし、「その上で(データを活用する)論理的なアプローチが必要だ」と語った。

データサイエンスが専門の山田健太・同大国際地域創造学部准教授は、「データと問題(課題)を結び付けるスキルは、AIが発達してもずっと必要になるものだ」と述べ、来年度からはPBL形式(学生自ら課題を発見し、解決する能力を高める)の授業も進めていくと方向性を示した。

沖縄でのデータ活用についてコメントを求められた小田島氏は、「観光(客)も来るし、サービス業も多いため、データサイエンスと相性が良い」と持論を展開。「データを活用して産業を本当にアップデートできる可能性がある」と期待感を示した。

同学部所属の富山香鈴さん(4年生)は、「自分が明らかにしたいものが何なのかという意識を持った上で、スキルを当てはめてデータ(結果)を出すことの重要性が分かった」と感想を述べた。

同大学の今後の目標について、主催者は「社会科学分野だけではなく、全学的な取り組みとして数理・データサイエンス・AI教育を受けた学生を少しでも多く輩出することを目指している」と語る。小田島氏の指摘のように、データ分野を生かした今後の沖縄産業の発展が期待される。

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