「見て、触れて、学んで」自然保護体験 札幌市内で「サイエンス・フェスティバル」

北海道の鉱石を説明する山の手博物館の内山幸二館長

札幌近郊にある自然史系博物館や動物園、図書館、さらに大学や研究機関が集まって北海道の自然保護や生物多様性についての理解を深める「CISEサイエンス・フェスティバル」(主催・一般社団法人ちせ)がこのほど、札幌市内で開かれた。北海道に生息する動物の生態や札幌近郊の浜辺の変化などについて教材を用いて体験できる会場は多くの親子連れでにぎわった。(札幌支局・湯朝肇)

アザラシや骨格標本、鉱石など

17の団体がブースで事業説明

「日本海に面し石狩湾を有する石狩市の海岸には多くの漂流物が流れてきます。例えばオウムガイ。イカ、タコの仲間で南方の生物ですが、暖かい海流に乗ってここまでやって来ました」――こう語るのは、石狩市内にある石狩浜海浜植物保護センターで職員スタッフを務める高橋恵美さん。1月28日、29日の2日間にわたって札幌市内で開かれたCISEサイエンス・フェスティバルには、同センターをはじめ北海道博物館や札幌市円山動物園、サケのふるさと千歳水族館など17の団体が参加。それぞれがブースを出しながら現在取り組んでいる事業を説明する。9回目を数える今回のテーマは「石狩湾から海の学びをはじめよう!」。

この中で、高橋さんは石狩湾の現状について説明した。

ヒグマの頭の剥製や毛皮に触る子供

札幌市の北側に隣接する石狩市は70㌔の海岸線を持つ。そのうちの20㌔は連続した砂浜から成っており、今なお護岸されずに自然のままの海岸砂丘が形成され、貴重な海浜植物や野鳥が生息する。同センターではそうした海の自然を保全すると同時に、失われたハマナスなどの海浜植物群の再生事業を行っている。「市内のボランティア団体などと協力し、海岸に漂着するプラスチックごみなどを取り除く美化活動も積極的に行っていますが、何よりも石狩海岸について多くの方に知っていただきたい」と高橋さんは語る。

一方、アザラシと人間の共生を目指す「プロジェクトとっかり」のブースではスタッフの小林由美さんがトドとアザラシの違いについて説明。「とっかりとはアイヌ語でアザラシのこと」と前置きし、「まずトドには耳たぶがあるが、アザラシには耳の穴があるだけで耳たぶはない。また、トドは後ろ足で支えて体を起こすことができるが、アザラシは後ろ足で地面を踏めず、おなかで体を移動させる。その他にもいろいろな違いがある。アザラシは漁師を困らす海獣とされるが、傷ついて海辺に漂着するものも結構います。そうしたアザラシを助けていきたい」と語る。ブースではアザラシやトドの毛皮などが展示され、参加者は実際に手で触れ、その感触を確かめた。

ブースの中にはユニークな団体も出展。その一つが「えぞホネ団Sapporo」(団長・工藤智美さん)。札幌市内で骨格標本作りや剥製標本作りを手掛ける有志の集まり。例えば、スーパーや肉屋で購入した豚足などから本物の骨を取り出して脂抜きし、立体マグネットとして教材用の骨格標本を作っていくという。結成されて7年目だが、これまで幾つかの賞を取るなどその認知度は高まっているという。その他、ヒグマのブースやサケ、鉱石のブースがある。

北海道内の鉱山から採取した鉱石や岩石を展示する「地図と鉱石の山の手博物館」(内山幸二館長)では、鉱物の結晶を実際に顕微鏡でのぞき、その美しさを参加者に体験してもらった。内山館長は「北海道はかつて至る所に金山がありました。北海道は資源の宝庫だったのです」と語る。

会場にやって来たある親子連れは「海のサケと川のサケでは体が違うのね。まず、色が違う。海のサケは赤身だけれど、川のサケは白っぽい。初めて知った」と感心したように話す。

今回のフェスティバルについて主催者は、「博物館や図書館などの社会教育施設と大学などの研究機関が連携し、地域の自然環境や生物多様性保全について一般の方々にも広く理解を深めていきたい」(一般社団法人ちせ)とその趣旨を語る。昨年、一昨年と新型コロナウイルスの感染症拡大で開催できず、3年ぶりの札幌でのフェスティバルとなったが、今後は道内各地でも積極的に開催していく予定だ。

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