北海道百年記念塔の存続は是か非か 江別市

市民ら教育的価値主張、解体差し止めへ提訴

存続の是非が問われている北海道百年記念塔

北海道札幌市の近隣、江別市に立つ北海道百年記念塔の存続を巡って今、北海道と札幌市民を含む地元住民がホットな争いを繰り広げている。昭和45年(1970年)に建設された記念塔に対して、道は老朽化を理由に解体着手を進めようとしているのに対し、幾つかの市民団体は道の方針を「開拓」の歴史を消し去る暴挙として反発している。百年記念塔の解体は北海道開拓の歴史教育にも影響を及ぼすだけに争いの結末に注目が集まっている。(札幌支局・湯朝 肇)

道は老朽化理由に工事契約締結

「北海道百年記念塔は単なる記念の建物ではないのです。北海道開拓に入植した先人たちへの想(おも)いが込められている。それを単に老朽化したから解体するという、まことしやかな理由で終わらせられない」――こう語るのは北海道を考える会会長で、また「北海道百年記念塔を守る会」の事務局スタッフとして解体反対の運動に奔走する菅原勝明さん。今年1月6日には地下鉄札幌駅と大通駅をつなぐ地下歩行空間で「北海道百年記念塔保全パネル展」を開催、記念塔の持つ意義や一方的に解体を決めた道の問題点などを分かりやすくパネルで展示した。

北海道百年記念塔は昭和45年に「北海道開拓」百年の記念事業の一環として建設されたもの。高さが100㍍、札幌市街など石狩平野を一望できる展示室があり、市民だけでなく道内外からやって来る観光客の見学ルートの一つとなっていた。周辺には2000ヘクタールを超える道立自然公園野幌森林公園が広がり、公園内には北海道博物館(北海道開拓記念館と道立アイヌ民族文化研究センターを統合)や北海道開拓の村などがあり、当時の自然と開拓の歴史を知る一大テーマパークになっている。

1月6日に市民団体が行った「北海道百年記念塔保全パネル展」

ちなみに、記念塔建立記銘板には「かつての原始の密林を伐り拓き、厳しい風雪に耐え抜いて本道発展の基礎を築いた多くの先人の想像を絶する辛苦を忘れることはできない」と刻まれている。また、札幌市や江別市内にある16の小中高校では校歌や校章にも使われ、郷土愛を育む教育的価値がある。

だが、こうした教育的価値を考えず、道は平成29年11月に「百年記念施設の継承と活用に関する考え方」という報告書を示し、「解体ありき」の取り組みを始めた。さらに昨年10月、道議会において道と地元業者間で解体工事契約が承認されたのである。

そうした中で、市民団体は対抗措置として昨年10月に道を相手に北海道百年記念塔の解体の差し止めを求める行政訴訟を起こした。「解体工事は塔があまりにも堅牢(けんろう)なため来年6月まで続く。本体に手が入るのは今年5月ごろ。それまでに司法の判断で塔を守り、道に対して『解体』ではなく、『補修』を求めていきたい」と北海道百年記念塔を守る会の野地秀一会長は語る。

道は記念塔の解体に対して「搭の歴史的・文化的価値は否定しないが、建設から現在まで52年が経過している。公園を利用される方々の安全確保や維持コストの面で解体はやむを得ない」(北海道環境生活部)としている。解体反対を訴える市民団体からは「記念塔が老朽化しているという科学的な根拠が薄いと指摘する建築家は多い。そもそも記念塔は100年耐久設計で建設されている。札幌テレビ塔や東京タワーは百年記念塔よりも古い。危険だから解体という話は聞いたことがない」(北海道百年記念塔を守る会)といった意見が出ている。

道は塔の解体後、「お互いの多様性を認め合う共生の立場で未来志向に立った将来の北海道を象徴する新たなモニュメントの建設」(道環境生活部)を考えているが、これについても地元住民からは「本来、記念塔は今日の北海道を築いてきた先人の苦労に感謝し、その思いをもって未来への限りない発展を誓うという象徴として建てられたもの。道が考えている計画とは明らかに趣旨が違う」と反論する。解体に反対する市民団体は今月に記念塔の現地視察(22日)や道庁へのアピールウオーク(23日)、記念塔裁判勝訴!決起集会(同日)など立て続けに開く予定。道と市民団体の記念塔を巡るホットな争いは当分続きそうだ。

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