年齢ごとに特徴表す巧みな表現 石川県金沢市「ふるさと偉人館」で自画像展

「審査員大賞」を受賞した作品群=金沢市の金沢ふるさと偉人館

石川県金沢市の金沢ふるさと偉人館で、恒例の「自画像展-自分を見つめ、自分を描く-」が開かれている。今回で15回を重ね、市内の幼児から中学生が、自身の顔をしっかり観察して描いた作品1573点が展示されている。作風は水彩絵の具やクレヨン、鉛筆、版画、パソコンなど思い思いの手法で自身の特徴を捉えている。全国的にもユニークな作品展で、これだけ個性豊かな顔が並ぶと実に壮観だ。(日下一彦)

構想の奇抜さ、筆致の確かさに感心

会場の自画像展は今回で15回を数え、1階フロアの壁や特設パネルに全作品が張り出されている。同展の生みの親の松田章一さん(元館長)の発案で、東京芸術大学で創設以来続いている卒業制作の自画像をヒントに「子供たちも自画像を描くことで、自分を見詰めるきっかけになれば成長につながるのでは」との思いから始まった。

展示は時計回りに幼稚園・保育園の年少、年中、年長組の順で、小学校低学年から高学年と続き、中学生の作品までで構成されている。数では小学校低学年と年長組の作品が最も多い。たどたどしい線や色の使い方が、年齢が上がるにつれてしっかりし、同時に観察力も増している。

笑ったり泣いたり怒ったりの喜怒哀楽の表現の仕方も工夫され、成長過程が一目瞭然でとても興味深い。子供たちにとって、日常生活で自分の顔をじっくりと眺めて、それを描くことはほとんどないだけに意義のある作品展だ。

作品群の一角に「審査員大賞」として10作品が選出されている。金沢美術工芸大学学長の山崎剛さん、金沢21世紀美術館学芸部長の黒澤浩美さんら5人の審査委員が2点ずつ選んだ。「上手下手ではなく、一生懸命に自分を絞り出す作業です。それがどこまで表現されているかを見させてもらいました」とある審査員は説明している。

年齢順に見ていくと、年少児はたどたどしい線で顔の輪郭を描くのがやっとだったり、目や鼻も書くので精いっぱいの様子。それでも一生懸命に取り組んだ様子が見えて、ほほ笑ましい。

年中、年長組になると観察力が深まり、顔の特徴や髪形などを上手に捉えている。年中組では、顔の表情がより詳細に描かれ、髪形も三つ編みや束ねた髪がはっきり描かれている。体の部位の特徴もよく表現され、耳が大きい、目がパッチリした子は、その特長を巧みに描き、成長が感じられる。

小学校の中・高学年になると、表情がさらに豊かになり運動に没頭して大粒の汗を流す様子など、作風がますます多彩になっている。一点一点じっくりと見ていくと、おとなしい性格が連想されたり、明朗活発な姿やちゃめっ気たっぷりの気性などもうかがえ、これが自画像展の良さのようだ。中学生の作品では、美術部の生徒の作品が主で、水彩や鉛筆でしっかりしたタッチで描かれ、鑑賞者を魅了する。

入選作を見てみると、細かな点まで丁寧に描かれ、構図の巧みさが増しているようだ。コロナ禍でマスク装着が定着したが、それを描いた一コマが入選している。セーラー服姿の中学1年の女子生徒は、口を覆っていた黒いマスクを今まさに左手でずり下げた一瞬を描いた。構図も喉元から顔の表情をのぞき込むようなローアングルで、その巧みさに感心させられる。

小学生の女児は、物憂げな表情を正面から捉え、見る者を一瞬、その場にとどまらせる効果がある。グレーの制服の下のカッターシャツはボタンがキチっとはめられ、清楚(せいそ)な印象を与え、これから多感な時期を迎える姿を表現している。

色彩の豊かさに驚かされる作品もある。幼稚園年中組の園児の作品で、使われている色は、背景に赤や緑、水色、黄色、黒色を描き、服装もその色を斜めの縞(しま)模様に取り入れた。カラフルで顔つきを見ると、“妖怪”のようにも見え、ひときわ異彩を放っている。メガネを掛けた4歳児で、絵柄から活発な性格がにじみ出ているようだ。

中には自画像に飽き足らず、自身の趣味も描いた作品も見られる。小学5年の男児の作品で、画面の中央に自身の顔を配し、その周りには30余りの恐竜や海中の生き物、空を飛ぶ怪鳥などを描いた。恐竜同士が戦う姿も加え、どの生き物も豊かな観察力で書かれている。構想の奇抜さ、筆致の確かさに感心させられる。

同展は2023年1月22日(日)まで、入館料は一般310円、65歳以上210円、高校生以下無料。休館日は年末年始(12月29日~1月3日)と月曜(祝日の場合は翌平日)。問い合わせ=電話076(220)2474。

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